最近、作曲家のドキュメントのDVDを幾つか続けざまに見ましたので、そのご報告を致します。本日、第一回目は、ベラ・バルトークのドキュメント『Roots ルーツ』。István Gaálという方のドキュメントフィルム。
ベラ・バルトークの伝記DVD:『Roots ルーツ』の仕様
DVDの仕様は、
All Region (Code 0) 〜 AmazonではRegion1となっていますが、0でした。
NTSC 4:3 180分
仕様言語:ハンガリー語、英語(吹き替え)
字幕:ハンガリー語、英語、ドイツ語、フランス語
本作品に日本盤はいま現在ありません。この手のものは今後も中々日本盤は難しいかもしれません。
日本のDVDでも再生可能ですが、日本語字幕がないので、音声をハンガリー語にして、英語の字幕を読むか、音声を英語にして、英語の字幕も補助とするかのどちらかになるかと思います。
ベラ・バルトークの伝記DVD:『Roots ルーツ』内容詳細
バルトークの全生涯を、手紙・日記からの抜粋のみのナレーションで紹介し、ほぼ全編にわたってその時々の関連曲を流すという構成。
演奏は殆どハンガリーの音楽家。ピアニストなら、コチシュ、ラーンキ、シフ、ヤンドー、指揮者はイヴァン・フィッシャーやエルヴィン・ルカーチ他、四重奏はケラー弦楽四重奏団など。名前は皆様もご存知の方が多いと思います。
勿論、バルトーク自身の録音、またヴァイオリニストならば、曲を献呈されたメニューインやシゲティの録音もところどころ使われます。
映像はバルトークの自身やさまざまに言及された人物、訪問先の風景や建物などを、当時の写真を使ったり、現代の風景で捉えたり、また関連する楽譜を写したり。勿論、演奏者の姿や劇作品では舞台を映すこともあります。
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非常に禁欲的な作りで、何と申し上げたら良いのか、全体として非常に淡々としています。NHKの名曲アルバムが禁欲的になって、それが3時間続くと言ったら良いでしょうか?
まだご存命の弟子の方へのインタビューや、演奏家へのインタビューなども織り交ぜてあれば、もう少し躍動感はあったのかも・・・と思わなくもないですが、バルトーク自身の言葉でというコンセプトに愚直なまでに従い、制作者が無闇とドラマ化しないで真面目と言えば至極真面目に作った作品です。
バルトークが生涯でどういったことを成したのか、何に対して興味を持ったのか、私がバルトーク関連の著作を幾つか読んだ感想では、要所要所をきちっと捉えていると言って良いように思います。
民俗学収集やリストへの考えは勿論、自作のオペラへのドビュッシーの影響や、ある時期バッハを集中的に研究したこと等々。長くはないのですが、同時代の音楽家への言及もありますし、その時々の自分の環境の報告や目にする自然の描写などもあり。自作への話も興味深くて、例えば「第2ピアノ協奏曲は、第1番がオーケストラにも聴衆にもちょっと難しすぎると考えて作ったものだ・・・」などとも。
劇的に盛り上げない作品ですから、次々へと流れる言葉、曲を興味を持ってみないと詰まらないと思う方もあるかと思います。既にバルトークが好きでさまざま読まれた方には、数々の古い写真の他はおさらいになってしまうやも知れません。 そういう意味ではやっぱり今からバルトークを聴いてみようという方向けのDVDでしょうか?
曲はナレーションの時期に合わせて、初期のコシュート交響曲から晩年の作品までまんべんなく紹介していますから、どれも断片的に出てくるだけですが、どういう曲をどの時期に書いたかを一通り知るに良い作り。それに対するバルトークのコメントもありますから、曲への興味を深め、聴きたい曲に目星をつけるには便利やも。
ベラ・バルトークその他のおすすめ:DVD&書籍&ピアノ曲自演
バルトークのドキュメント作品は、晩年のアメリカでの生活に焦点を当てたAfter the Storm: American Exile of Bela Bartok (1991)が輸入盤ながら9月末日よりDVD化されて発売開始。
リンク先のAmazon.co.jpも予約開始されております。 こちらは、ショルティやメニューイン、二人の息子へのインタビューを含めたものだそうで、ドキュメントとしては、もっと楽しみやすい作りかも知れません。
私は未見ですので、後々手に入れることがあればご報告致します。
2009年3月末日注:その後、このDVD After the Stormを見て、なかなか面白いDVDと感心致しました。記事を一つ書きましたので、お時間あればどうぞ。
・ベラ・バルトークのドキュメントDVDおすすめ After the Storm:American Exile of Bela Bartok
なお、ご参考までに日本語で手に入りやすいバルトークの文献を。
- 『バルトーク音楽論集 (あごら叢書)』:☆☆☆
- バルトークの音楽論を集めた浩瀚な書籍。バルトークの音楽に関する考え方は当然ながらこの書籍に一番まとまっていますし、最近読み直してこれが一番重要と思います。
- 『ある芸術家の人間像―バルトークの手紙と記録』:☆
- バルトークの手紙やメモを抄録したもの。日常の些事や音楽観など話題はさまざまで、好きな方には面白いものですが、他の著作を先に読まれた方が良いかも知れません。
- 『バルトーク晩年の悲劇』:☆☆
- アメリカでの晩年のバルトークを記述したもの。音楽家バルトークというより、変わった人柄や自然観などがよく判るもの。
その他、バルトークの民俗音楽収集の文化面のみならず、政治的社会的な反響に目を当てた『バルトーク―民謡を「発見」した辺境の作曲家』も興味深く読めると思います。
CDの名盤のご紹介はこのブログもはじめて日が浅いので、バルトークのピアノ協奏曲しか取り上げたことがありません。よろしければご参考まで。
バルトーク自身の録音も遺されていて、フンガロトン Hungaroton のBartok at the Piano(6枚組)はバルトークのピアノ作品全集の録音でも著名なゾルタン・コチシュが監修の上、手に入る録音を全て集めたという企画でお薦めです。
自演のミクロコスモス(主に100番以降から抜粋)やベニー・グッドマンとシゲティとの《コントラスト》は有名ながら手に入りにくい物ですし、Vanguardから出ていたシゲティとのリサイタルも全て収録。
ピアノロールの録音や歌曲ピアノ伴奏その他、CDではマイナーレーベルから出たきりのものもしっかり入って居ります。 テンポを比較的きちっと守ること、また、感傷的な弾き方をしないことは特色と言えましょうか?
2009年3月末日注:この6枚組の詳細記事を一つ書きました。みせつけるような感傷的な表現がないけれど、透明感があって、独特の美しさと哀しさが漂うといいましょうか。素晴らしい演奏です。
・ベラ・バルトークのおすすめ名盤 − 自作自演ピアノ録音集 Bartok at the Piano(Hungaroton CD6枚組)
では!
sergejoさんは既に資料をお読みでしょうが、生徒のレッスンをストップウォッチを用意してやったほどの人ですからね。。。
Bartok at the Piano(6枚組)は、魅力だな!
Bartok at the Pianoは写真に 1 とついていますが、実際はこの6枚組一つで完結しています。
かつてLP盤で1と2に別れていた物が、合わさったセット。中のパンフレットが1と2に別れているのですが、CDケースを撮らずに、パンフレットを写真で撮った為にそうなってしまっています。
・・・と説明が下手でややこしくなってしまいました。