本日ご紹介する作品『ヴィオラ・ソナタ』。監督はアレクサンドル・ソクーロフ Alexander Sokurovとセミョン・アラノヴィチ Semyon Aranovich。ソクーロフは叙情的な作風で知られる映像作家で、ご存知の方も多いかと思います。この作品もみずみずしく、心にしみいるような映像となっています。アラノヴィッチが制作を初めて、最終的に編集して作品としたのがソクーロフとのこと。制作年ははっきりしませんが、1980年代前半のようです。

言葉はロシア語で、字幕で英語と日本語が選択可能。
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ショスタコーヴィチのドキュメント『ヴィオラ・ソナタ』の内容詳細
さて、この作品、タイトルが『ヴィオラ・ソナタ Sonata for Viola』とあるので、この曲を中心に晩年のショスタコーヴィチを扱う作品かと思いましたが、主に青年期から壮年期に焦点を当てた伝記的作品。昨日ご紹介した『ショスタコーヴィチ against スターリン 戦争交響曲集』と似て非なるのは、取り上げているフィルムと映像のトーンとでもいうものでしょうか。こちらの『ヴィオラ・ソナタ』はもっと断片的で主張せず、段々とこちらに染み入ってくるような作り。詩的と言ってしまって良いと思います。
音楽家へのインタビューなどはありません。
面白い場面は幾つかあって、特に私の記憶に残るものを挙げてみると、、、まず一つ目はショスタコーヴィチが企画だけで制作せずに終わったバレーの筋書き。物質的というか享楽的というか、そういった欧米社会といいますか、現代文明を題材にしています。
他には、ムラヴィンスキーとバーンスタインの指揮する姿。この二人のショスタコーヴィチの捉え方がまったく違うように見えます。演奏後の舞台に現われたショスタコーヴィチはまずもってオーケストラに歩み寄り、感極まったバーンスタインが握手の上に強く抱きつきますが、ショスタコーヴィチが少々遠慮気味でした。

映像とは時代が異なると思いますが、彼らの録音は出て居りますので、よろしければ下のものをぜひ。
ボロディン四重奏団によるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全集の6枚組で、弦楽四重奏曲全15曲の他、弦楽八重奏のための二つの小品 Op.11とピアノ五重奏曲 Op.57(ピアノはリヒテルが担当)を収録。
勿論、ショスタコーヴィチが生きた当時のさまざまなニュースフィルムや写真が面白く見られることは言うまでもありません。

今現在、オイストラフによるショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲で手に入りやすい物は、左上の写真のBBCから出ている3枚組のオイストラフ録音集と思います。
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最後になりますが、この『ヴィオラ・ソナタ』は制作後、KGBに見咎められて五年の間、発禁処分にされていたとのこと。
特になにが問題かということもないと思うのですが、国民の英雄としてのショスタコーヴィチではなく、悲劇的に取り扱ったのがいけないとされたのでしょうか・・・
では!