2008年10月15日

アルトゥール・シュナーベル著『わが生涯と音楽』を読んで 補足 − 素直に聴いて感じることとよく知ること

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アルトゥール・シュナーベル著『わが生涯と人生』の商品写真昨日は、1882年のオーストリア生まれの往年の名ピアニスト アルトゥール・シュナーベル著『わが生涯と音楽』をご紹介しましたが、記事を挙げた後に、読み直して少し補足すべきかと感じました。

昨日の話だと、あの知識・この知識が付く、という面ばかりを強調しているかも・・・これが、その反省点です。

愛が出発点でなければなりません―音楽への愛が。愛はつねにある知識を生み出すが、いっぽう知識はただなにか愛に類似したものをまれに生み出すにすぎない、というのが私の最も強固な信念のひとつです。(p.209)

明瞭な言葉ですが、“愛”と言う言葉もさまざま手垢がついているので、上の言葉を必要以上に甘く感じて、詩的に想像を膨らませてしまったり、斜に構えて正面から取り合わなかったりとなってしまうかも知れません。

これに関するいわば一例で、本書第二部の質疑応答の中にもう少し具体的な会話がありましたので、少々長くなりますが、引用してみます。

シュナーベル「『第九交響曲』がいつ書かれたか、あなたは知っていますか?」
発言者「ほぼ1820年だったと思います。」
発言者「1810年から1820年に掛けてです。」
シュナーベル「もしも最初のいくつかのスケッチにまでさかのぼれば、そうなります。彼がはじめてそれらを走り書きし、これらのスケッチに用いられている素材に何回となくもどっていったとき、ベートーヴェンはそれらがのちになって、『第九』という大建築物の一部にまで発展することを、たぶん知っていたのでしょう、あるいはおそらくはまだ知らなかったことでしょう。彼はこの素材を、まったく同じように別の枠組に使用していたかもしれません。私が考えるにこれは、素材の変化に富んだ有用性を解明する、きわめて重要な事実なのです。」
発言者「あなたはここであるいは他の場所で、《音楽以外の》という言葉を使われました。ベートーヴェンが『第九交響曲』を1820年に完成したという事実が、どの程度まで価値があるのでしょうか?
それはどの程度まで音楽的な事実で、音楽以外の事実ではないのでしょうか?別に私は、皮肉や批判的なことをいおうとしているのではなく、ただそれを知っていることが、音楽家や音楽愛好者にとって、あるいは一般的に、どれほど重要なのだろうかと思っているのですが。」
シュナーベル「日付や年代のことですか?」
発言者「そうです。」
シュナーベル「それは重要ではありません。偉大な人びとの生涯の資料を知ることは、彼らへの敬意のしるしです。彼らの創作品のひとつが完成された日や時間を知ることは、全く無関係なのです。それは、音楽的知識を増すものではありません。『第九交響曲』にたいする反応はつねに同じであり、それが公表される準備ができた日とはぜんぜん関係がないことでしょう。」(p.226〜)

これは自省・自戒の独り言になるのですが、こういったブログを書いていると、所詮幼稚なものにすぎないのに、ついつい背伸びをしながら、あの知識・この知識、あの録音・この録音などと語ってしまうものです。

素直に聴いて感じることとよく知ることといったらいいのか、感性と知識というのか、愛情と理解というのか。前者も後者も相互に影響をし合う・・・などと考えるとどうにもややこしくなります。シュナーベル自身も別の場所で、

芸術は創造的意識を経て生じた自発的なものです。(p.241)
引用者注:「創造的良心」と訳されていましたが、ここは「意識」にいたしました。原文を確かめていませんが、いずれにせよ conscious という言葉を使っていると思います。

と発言しており、どっちが卵か雛かは、まぁ曖昧です。いずれにせよその両面を大事にすることが肝要なのでしょう。それは当たり前に聞こえますが、日常生活の中では存外に、「感性派 ないしは 理性派」 と、あちらを取れば、こちらがたたない式の二者択一が多いようにも思います。

その二つは、ハサミとかなづちのようなものと思えば、それぞれの場でそれぞれをうまく使えば良いこと。片一方の道具しかなければさまざまに不都合でてきてしまう。

******

いつも至らぬところだらけの弊ブログでありますが、そのあたりのバランスもよくうまく書ける日が来るのかしら・・・と、、、考えながら、また一つ駄文を連ねました。

ではまた次回!

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posted by sergejO at 13:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 名著ご案内!
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