ちょっと間が空きましたが、前回の続きで12月11日がフランスの作曲家 エクトル・ベルリオーズの誕生日だったことにちなんで、その書籍を幾つかご紹介であります。
ベルリオーズに関連してのおすすめ品点
1) ベルリオーズ著・R.シュトラウス補筆『管弦楽法』
元々ベルリオーズが著した管弦楽法の指南書に、R.シュトラウスがコメントや補筆を行ったもの。五百数十頁あります。R.シュトラウスが書き足した部分は、ちゃんと破線がついてわかりやすくなっております。
内容は、オーケストラの各楽器を個別に一つ一つ取り上げて、その楽器の音域、音の印象、演奏上の特徴(こんな弾き方は難しいですとか、こういった音の重ね方はよくないですとか)を楽譜を参考に提示しながら説明するもの。R.シュトラウスは特にワーグナー以降のさまざまな展開について補筆しています。
この書籍は、私のように音楽理論の教養無し、いじるのは家のピアノ程度となると、なかなか難しいもの。ただ各楽器について譜例が豊富に出ているので、その曲のCDなど引っ張りだして来て、「あっ、こういうことか!」と判れば御の字ですが、普段は半知半解のまま「そういうことなのかな〜」と・・・
但し、これは浅学の私の話で、オーケストラに参加されている方だったら、ご自分の楽器に付いては当然面白いでしょうし、他の楽器も身近に接しておられるのですから、十二分に楽しめるのではないでしょうか?
譜例は見やすい大きさ。ざっくり全ページ数の少なくとも半分は譜例と言ってよいほど沢山ございます。
何分高い書籍なので、一度書店などで確かめられると良いかと存じます。
上に書いたような、私程度の使い方−この楽器の効果的な使用例はどの曲だろう?と知る程度−であれば、近衛 秀麿『オーケストラを聞く人へ』などが良いかも知れません。カバーが変わるかも知れませんが、中古は書籍がAmazonで数種類でています。右の写真のリンク先の他にも、
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などがあり、一番安いもお選びくださいませ。
2) シューマン著『音楽と音楽家』
今一冊ご紹介するのは、20余頁に亘る幻想交響曲の紹介エッセイを載せているシューマンの『音楽と音楽家』。この書籍自体、シューマン自体の音楽感は勿論、19世紀のシューマンとその周辺に於ける音楽受容の様子を教えるもので大変面白く、いままでもこのブログで何度も紹介致しました。
エッセイの大半は、理論的な話があって、私なども半知半解(そればっかりですが・・・)で読むしかないのですが、この当時、この曲がどういう文脈で評価されようとしていたか大変面白いドキュメントとなっています。
それにシューマン自身、理論的な話ばかりでなく、素晴らしい印象批評も必ず入れてくれる書き手なので、そこだけは心にぴしっと来るものがあって、私などにも大変楽しく読めます。
ベルリオーズに関するエッセイで言えば、例えば、下の部分。非常に良い描写と感心致します。
ほかの楽章も、一々第一楽章と同じように解剖していたら、あまり長くなるし、またむだだろう。第二楽章はそこに描かれる舞踊と同様に、千変万化の変化ぶりを発揮する。第三楽章は実に美しいもので、縹渺たる半月のように浮き沈みする。最後の二楽章は全然中心を持たず、ひたすら終局へともがく。しかし、どんな時でも、極度な無形式のかたわらに精神的連関が認められるので、ジャン・パウルのことを− ひねくれた言い草だが − 「下手な議論家で、偉大な哲人」とよんだ、誰かの言葉を思わせるものがある。
この書籍度々ご紹介することが多いので、以前よりお読み頂いた方には、いまさらですがぜひお手にどうぞ!
小生の運営するクラシックおすすめ情報&ショップサイトLook4Wieck.comで、もう少し詳細にこの『音楽と音楽家』の紹介文を書いて居ります、もしお時間がありましたら、ご覧くださいませ。
本日は、もう一つちょっと気になるコリン・デイヴィス指揮のベルリオーズ全集について、簡単にご紹介致します。
3) コリン・デイヴィス指揮Berlioz Edition(24枚組Box Set)
このコリン・デイヴィス指揮Berlioz Edition(24枚組Box Set) は、管弦楽作品、オラトリオ、序曲、宗教曲、それにオペラを三作(『ベンヴェヌート・チェッリーニ』・『ベアトリーチェとベネディクト』・『トロイア人』)を収めて、リンク先をご覧の通り、マーケットプレイスの優良業者で24枚組にして、現在1万数千円という有り難い価格。
演奏も私が聞く限り、ベルリオーズを思う存分に楽しむに十分優れたもの。
幻想交響曲で言えば、所収のロイヤル・コンセルトヘボウの演奏は、第二楽章にコルネットを用いる版を遣っていて、その音量が適度で楽しかったり、、、
しかし、問題が一つ。このBox-setは輸入盤であり、声楽曲の対訳の有無は重要な問題です。
簡単に申しますと、宗教曲および『ロミオとジュリエット』や『ファウストの劫罰』といった劇的交響曲、『真夏の夜の夢』他の管弦楽を伴った歌曲には、原詩がついております。つまり、フランス語かラテン語のみで、英訳もなし。
折角入っている『レリオ』については、歌のフランス語テキストはありますが、あのかっこいい独白部分は省略。
オペラについては、フランス人さえ困るのでは?と思うのですが、フランス語台本もついておらず、それぞれのオペラの概説のみ。勿論、輸入盤ですから、日本語など一言もありません。
かくなる次第で、ベルリオーズの曲の対訳テキストが別途出版されて居らない現状、ネットでも見つけ難い現状を考えると、この輸入盤セットを買うのは、よほどフランス語ができる方以外は、音楽を楽しむ他ないという、、、、
演奏は悪くないし、曲数も価格も良いものですが、どうにかならないものか・・・と、このセットを買ってしまった私も思うばかりです。
では!