昨晩は、東京オペラシティ コンサートホールに、アメリカの若い女性ヴァイオリニスト ヒラリー・ハーンのリサイタルに行って参りました。瑞々しい音の広がりを堪能できたコンサート。
演奏曲目詳細は以下の通り。これがまた意欲的なプログラムで、スタンダードナンバーとマイナー曲がほどよく折り混ざっています。
会場の入りは、安い席で幾らか空席があったので、8割5部から9割がたといったところでしょうか?このプログラムでもそれだけ、人がいらっしゃるのですから、ヒラリー・ハーンの人気はさておいて、今後、もっと変わったプログラムが増えたらいいなぁと感じました。
ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル 2009年1月15日 於東京オペラシティの曲目
- ウジェーヌ・イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 Op.27-4
Eugène-Auguste Ysaÿe: Sonata for solo violin No. 4 in E minor Op.27-4 - チャールズ・アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第4番《キャンプの集いの子どもの日》S.63
Charles Ives: Sonata for violin No. 4, "Children's Day at the Camp Meeting," S.63 - ヨハネス・ブラームス(ヨーゼフ・ヨアヒム編曲):ハンガリー舞曲集より 第10、11、12、19、5、29、21番
Johannes Brahms(arr.Joseph Joachim): Hungarian Dances No.10, 11, 12, 19, 5, 29, 21 - チャールズ・アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 S.61
Ives: Sonata for violin No. 2 S.61
休憩20分
- ウジェーヌ・イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番 ホ長調 Op.27-6
Eugène-Auguste Ysaÿe: Sonata for solo violin No. 6 in E major Op.27-6 - ウジェーヌ・イザイ:子どもの夢 Op.14
Eugène-Auguste Ysaÿe: Rêve d'enfant(Children's Dreams) Op.14 - チャールズ・アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 S.60
Charles Ives: Sonata for violin No. 1 - ベラ・バルトーク(ゾルターン・セーケイ編曲):ルーマニア民族舞曲より Sz.56
Béla Bartók(arr.Zoltan Székely): Romanian Folk Dances for violin & piano Sz.56
アンコール曲は、ニコラ・パガニーニ:カンタービレ Nicola Paganini: Cantabileとメインプログラムにあったブラームスのハンガリー舞曲第5番でした。
ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル 2009年1月15日 於東京オペラシティの感想
ヒラリー・ハーンの演奏の特徴は、、、時折コメント頂戴するkenさんのブログのまとめが、まことにその通りと思いますので、そのまま拝借致します
・楽譜の要請を汲み取った客観的な音楽設計をし、
・正確な技術で設計に忠実な演奏を実行することを常に心がけ、
・しかも、ヴァイオリンが持つ本来の音・響きを熟知していて不要な演出は絶対にせず
・ただ「音楽そのものの魅力」を聴衆に伝えることに使命感と喜びを見出している
昨晩のコンサートの印象もまったくこのままではないでしょうか?それで、丁寧に弾かれる音が、ただただホールに奇麗に、瑞々しく伸びて行くのを楽しむ。
終止腰から頭まで背筋の良い演奏姿勢そのままのような、素直な音でゆがまない音。
声のきれいな人が、そのままに素直に歌を歌って、それがこちらのからだに染み込んで行く様な、そんな感じとでもいいましょうか。
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ピアノを勤めたのは、ヴァレンティーナ・リシッツァ Valentina Lisitsa。こちらがまた奇麗な方ですが、ブリュネットで小柄なヒラリー・ハーンが髪の色と同系統で少し玉虫色に光るドレスで可憐な姿だったのに好対照で、背の高いリシツァは輝く様なブロンドに、赤い口紅にビロードの漆黒のドレス。「大人・・・」です。
結構、即席のデゥオという感じもしましたが、素直なハーンの音楽に、リシッツァのピアノは茶目っ気があって、音楽も見た目のままな好対照だったような気が致します。
アイヴズのヴァイオリン・ソナタなど、滅多なことでは耳にしない曲と思いますが、如何にもアイヴズらしい素っ頓狂な曲調が入って来て、「いかにも!」と思って居りました。曲を聴いて、下手すると声をあげて笑ってしまうのがアイヴズらしいところ。
ヒラリー・ハーンのおすすめ名盤:DVD『ポートレート』
弊ブログの性格上、では、ヒラリー・ハーンの録音で追体験を!と参りたいところですが、昨年2008年3月17日のヒラリー・ハーンのコンサート 於 横浜みなとみらいホール(ジャナンドレア・ノセダ指揮 BBCフィルハーモニック管弦楽団との共演)に書きました通り、彼女の広がって行く音が、録音ではどうしても捉えきれていないという印象はまったく変わりません。
契約レーベルがSONYから独グラモフォンになって、少し録音が変わったようですが、やはり、どうでしょう。その後、既出の録音はすべて聞いてみたのですが、一番大事なところが、演奏会でしか体験できない・・・そんな好例が、ヒラリー・ハーンだろうと考えて居ります。
それでも無理矢理推薦すると、DVD ヒラリー・ハーン:ポートレートが一番良いのでは?
これは、50分のドキュメント映像に、およそ同じ長さの演奏映像がついたDVD。
ドキュメントでは、演奏会の風景を織り交ぜながら、コンサートの楽屋裏の姿を映したり、ハーン自身が学んだカーチス音楽院を紹介して、学生時分の思い出を語ったり。その他も、さまざまな活動状況を、インタビューともども楽しむという内容。ヒラリー・ハーン自ら、「録音では、細かなノイズその他が録音しきれないので、自分は好きではない」と言っていたのが印象的でした。
演奏映像の曲目は、二曲。
- コルンゴルド:ヴァイオリン協奏曲 Op.35(共演 ケント・ナガノ指揮/ドイツ交響楽団)
- モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ K.301(293a。共演、Natalie Zhu)
で、たっぷり全曲録音されております。
「どうしてもCDも!」と思われる場合は、現時点で私の趣味で強いておすすめするとすれば、バーバーとマイヤーのそれぞれのヴァイオリン協奏曲を入れた一枚、または、シベリウスとシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲を入れた一枚でしょうか・・・。
「実演でぜひ、、、」という思いは変わらないのですが、シベリウス以外の協奏曲については、なかなか名録音も少ないので、単に曲を知るという意味でも、おすすめしやすいかと存じます。
では、また次回!
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