2009年02月09日

オペラ《ヴォツェック Wozzeck》のDVD − 本日はアルバン・ベルクの誕生日です

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ヴァイグレ指揮バルセロナ・リセウ歌劇場 ベルク:歌劇≪ヴォツェック≫(2006ライヴ)の商品写真

本日は、オーストリア出身の新ヴィーン楽派の三人集の一人、アルバン・ベルク Alban Berg(1885-1935)の誕生日

昨年は、何を取り上げようか・・・とボソボソ書きながら終えてしまいましたが、その時、リクエストを頂いたアルベン・ベルクの最初のオペラ《ヴォツェック Wozzeck》Op.7を今年は取り上げようと思います。

アルバン・ベルク:歌劇《ヴォツェック Wozzeck》Op.7の概要&あらすじ

難しいことを書こうとするとボロが出るので、「これから、聞いてみよう!」という方に、弊ブログ一流の気安くゆるいご紹介を致しますと。

  • 完成は1921年、初演は1925年という現代もの。十二音技法のオペラというと、苦手・・・と思われるかも知れませんが、100分強〜2時間程度の長さのこの作品が、意外に聞き易いのです!
  • ストーリーは典型的なオペラと違って、リアリスティック。それでいながらどこか超現実的な感じもします。楽しむというより、身につまされ、すっかりヴォツェックに同情しながら、苦々しい気分を・・・そういう意味では、「オペラが苦手・・・」という人の方が楽しめるかも知れませんし、普通のオペラが好きな方もぜひ変わったものを!
  • 表現主義というのでしょうか、さまざまな種類なり程度の狂気が出てくるドラマに音楽がぴったり・・・といいますか、この音楽がそういった内面のドラマを表現しているというか、いずれにせよこんなに言葉、場面、音楽が密に結びついた作品というのは、なかなかないと感じさせます。

もし、映画が好きな方がいらっしゃったら、フリッツ・ラングの映画のようなオペラといったらなんとなくお分かり頂けるかも。

バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場 ベルク:歌劇≪ヴォツェック≫(1994ライヴ)の商品写真簡単に、ストーリーをご紹介すると、主人公は、軍隊付きの理髪師ヴォツェックという男。言ってみれば、でくの棒なり、うどの大木で、仕事はできず、恋人マリーと未婚のまま息子を作ってと世間的には揶揄される存在。そのマリーが軍隊の鼓手長にみそめられて、浮気をしたことで、ヴォツェックに狂気が走り・・・後は、大体想像がつくかと存じます。

一見、誰も彼もが狂気と見えるのですが、無知で非道徳的な愚か者と看做されているヴォツェックが、実はもっともヒューマンで感性豊かと言える・・・ここに芝居への共感が生まれます。正常とみなされるものが、残酷にヴォツェックからかったり、それこそ突如crazyなことを口走ったり、妙に偏執狂的だったり。リアリステリックに人間の本質を見ているとも言えますし、当時の時代の雰囲気を反映したとも考えられるでしょうし、階層からくる確執もあれば、残酷に人に優劣をつけるお金の問題も有り・・・

あらすじは簡素と言えば簡素ですが、細かく見ると実にさまざまな要素があって、それがオペラの随所に表現されています。

そのアルバン・ベルク自身の第一次大戦での軍隊経験が活かされているとのことで、人間の生身の姿をいろいろ見た事が反映しているのでしょう。

序でながら、この時代のドイツの雰囲気を綴った文章で、記憶に残るのは、映画監督の自伝で『ジャン・ルノワール自伝』の述懐。手元になく引用できないので残念ですが、おぼろげな記憶ですが、「第一次大戦後のドイツの人心の荒廃が見ていて気の毒になるほどだった」と結ぶその記述は、短いものでしたが、読んでいて「あぁ」と思わせるものでした。

このオペラについて、大変面白い一文をネットに見つけたので、リンクしておきます。多分、音楽学者の方の文章と思いますが、オペラの元となった事件やゲオルク・ビュッヒナーの芝居の他、音楽的・芝居的構成のさまざまについて、興味深い指摘です。

アルバン・ベルク オペラ《ヴォツェック Wozzeck》のDVDのおすすめ名盤

ブルーノ・マデルナ指揮 ハンブルグ歌劇場 ベルク:歌劇≪ヴォツェック≫(1970録音)の商品写真価格的にも内容的にも一番おすすめしたいのは(あくまで私の趣味です!)、ブルーノ・マデルナ指揮 ハンブルグ歌劇場 ベルク:歌劇≪ヴォツェック≫(1970録音)

この作品は、スタジオ録音に、昔風のというよりこの頃のヨーロッパ映画の演出でカラー映画としたもの。オペラはライヴ映像で・・・という方の趣向にあわないのがちょっと残念です。

主人公ヴォツェックは、トニ・フランケンハイム、恋人マリーにセーナ・ユリナッチ、太鼓長はリヒャルト・カシリー(と読むのでしょうか、Richard Cassilly。輸入盤で持っているので、読み方判らず。)

スタジオ録音に映画仕立てなので、声もオーケストラもはっきり聴こえるのですが、このオーケストラの演奏がいま出ているDVDであれば、一番いびつに聴こえて説得力があると感じました。

もう一つ、このDVDで気に入ったのは、ヒロインのマリーの取り扱い。これが尻軽女にしてしまっては問題で、彼女も世間的にやはり後ろ指さされる存在。ストレスもあるのか自暴自棄に浮気を、、、しかし、聖書を頼りに回心したものの、ヴォツェックに・・・さまざま複雑なキャラクターなのですが、そこがうまく複雑なままに提示されている感じました。

他に、国内盤があるDVDをご紹介すると、

冒頭に商品写真を置きましたヴァイグレ指揮バルセロナ・リセウ歌劇場 ベルク:歌劇≪ヴォツェック≫(2006ライヴ)。リセウ歌劇場のオーケストラもちょっと苦労しているかも知れませんので、芝居を楽しむDVDでしょうか。

すっかり今風演出のヴォツェック。大きな工場が舞台になっていて、皆作業着を着て、一部のものは酸素マスク。その他もろもろと奇抜な舞台。悲劇をヴォツェックのみに集中させて、マリーが悲劇のヒロインと私には見えなかったのですが、どうでしょう。現代では浮気にあまり重みを置くのは難しいということでしょうか?

演出がカリスト・ビエイト Calixto Bieito。演劇界のタランティーノと言われているそうです(とどこかに書いてありました!)。キャストは、ヴォツェック Franz Hawlata、マリー Angela Denole、鼓手長 Reiner Goldberg

私はこれも輸入盤で見たので、国内盤がどうか知れませんが、最後にエキストラが男女素っ裸で登場。よく判りませんっ!?よく判りませんが、なんかしっちゃかめっちゃかに騒々しく、こういう感じの舞台が好きな方にははまるものかも。

最後の一つは、写真の二つ目にあるもので、日本でも数年前に公演のあったバレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場 ベルク:歌劇≪ヴォツェック≫(1994ライヴ)。日本公演と同様、パトリス・シェローの舞台。バレンボイム、遅い・・・というイメージがある向きには、メリハリはついている演奏ですので、ご安心を。日本公演で楽しまれた方ならこれをお選びになるでしょうか。

キャストは、ヴォツェック フランツ・グルントヘーバー、マリー ヴァルトラウト・マイアー、鼓手長 グレアム・クラーク

舞台は抽象的で、映像のカット割りのせいか、ちょっとDVDではとらえがたい感じもしましたが、上のバルセロナと比較すれば、服装なども古典的でおもちゃ箱をひっくり返した印象はないです。

ただ、音楽にメリハリはあっても、なんとなく生々しくは聴こえない気がしたのですが、これは私の趣味も十二分にあると思います。もし、視聴などできたら、それぞれお確かめになってください。

では!

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posted by sergejO at 23:55 | Comment(2) | TrackBack(0) | 作曲家の誕生日です!
この記事へのコメント
ヴォツェックは、映像では目にしたことがないのです。
聴いているだけで情景が浮かびますし・・・それがどうにも薄暗くて、怖いので。(ホラー系が苦手なんです!)

でも、作品は魅力的です。
冒頭の部分はとくに、あのビッグバンが初演当時からショッキングだったのがとてもよく理解できます。
十二音技法でよくこれだけのものが書けた・・・ベルクは凄いですよねえ!

ちなみに、「十二音技法」は決して<無調>ではない旨、シェーンベルクが言明しています。
これまで十二音技法=無調音楽、というのは理屈に合わないなあ(だって、作曲者が任意に旋法を構築するというのが基本的な考え方ですから)と漠然とは思っていましたが、今日、とある書物で初めてはっきり目にして、やっときちんと分かった、というところです。
・・・遅かりし、由良之助!
Posted by ken at 2009年02月11日 00:00
ほんとに、あの出だしから「なになに、何これ?」ぐっと惹き込まれます!
DVDの方は、音からの想像を上回る演出かと云うと、そこまでではないかも知れません。
一番上の映画版がもうちょっと気味悪く撮れてると私などには、丁度良いのですが・・・
Posted by sergejO at 2009年02月11日 22:23
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