2009年03月03日

ヘンデルのオペラDVD ウィリアム・クリスティー指揮《オルランド》− ヘンデル没後250年 その3

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輸入盤DVD ウィリアム・クリスティー指揮 ヘンデル:《オルランド》Amazonの商品頁を開く近日は、2月23日のジョージ・フリデリック・ヘンデル(ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル 1685-1759)の誕生日および本年ヘンデル没後250周年にあたる・・・ということで、ヘンデル関連で幾つか書いて居ります。

前回、ウィントン・ディーン著『ヘンデル オペラ・セリアの世界』を取り上げましたが、本日以降はそのヘンデルのオペラ作品から、近年発売が増えたDVDをちょこっとご紹介致します。

今回取り上げるのは、ヘンデルの31作目のオペラ1732年に作曲された《オルランド》。ヘンデルの40以上のオペラの中でも、評価が高い部類の作品です。

ヘンデル:歌劇《オルランド》のあらすじ

この3幕のオペラ、シャルルマーニュ(カール大帝 8C〜9C)の12勇士の一人、伝説の英雄ロラン(ローラン。イタリア語でオルランドとなります。)をを主人公に、後々外伝として作られた劇作品を下敷きにしております。

トマス・ブルフィンチ著『シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス (講談社学術文庫)』のAmazonの商品頁を開く登場人物は、五人。元の配役もあわせて書きますと、

オルランド(シャルルマーニュの勇士の一人で騎士。アンジェリカを愛する。Alto Castorato)
アンジェリカ(Cathayですから、契丹の王女。オルランドの恋人ながら、いまはメードロに心変わり中。Soprano)
メードロ(アフリカの王子。アンジェリカを愛しながら、ドリンダにも興味あり。Alto)
ドリンダ(アンジェリカの召使い。メードロを愛する。Soprano)
ゾロアストロ(魔法使い。bass)

アンジェリカを思うばかり恋煩いの状態の英雄オルランド。王女アンジェリカは、アフリカの王子メードロに恋してしまい、オルランドは嫉妬に狂います。怒りのあまり、二人を殺めてしまうものの、魔法使いのゾロアストロによって、深い眠りにつくオルランド。アンジェリカもメードロもゾロアストロの手でよみがえり、オルランドは理性を取り戻して、二人の門出を祝う。。。という物語。アンジェリカの召使いドリンダはメードロに恋するものの理性でそこから身を引きますが、全編にわたって、ほどよく常識人にして、かつ、人情味もあって、ほっとするキャラクター。

聞き所は、第二幕の終盤のオルランドの怒りの場面とはよく言われる事です。前回のエントリーでご紹介したウィントン・ディーン著『ヘンデル オペラ・セリアの世界』によれば、ヘンデルのオペラは、当時の習慣に反して、主役だけでなく、脇役もきちっと作曲して重要な役割を与え、歌の場面だけ重視せずに全体として劇的統一感をもたらし、一つ一つアリアの中にも複雑な感情を表現している由。ヘンデルは勿論、この時代のオペラにお詳しい方なら、この作品一つにもヘンデルの才能を多々感じることでしょうが、現代の一般的な聴衆が耳にした場合、やはり、耳に心地よいヘンデル風の旋律や転調を楽しむということになってしまうのは、やむを得ないと思います。

ただ、上述の配役やあらすじをご覧の通り、主人公は人気のカストラートが歌い、五人ながらも世界のあちらこちらから来た人物設定で、ましてや魔術師もでてくるとなると、当時はかなりの大スペクタクルで、観客をあっ!と言わせた様子はなんとなく思い浮かびます。役柄と実際の演じ手の性別もずれていたり、一見英雄譚に見せながら、どこかコケティッシュでパロディ的楽しみもあったり。当時の良識派が、「このイタリア式オペラというものはなんだ!?」と感じた、グロテスクさや感情の爆発はどんなものだったのだろうと、想像しながら聞いてみるのも楽しいもの。

ヘンデル:歌劇《オルランド》のおすすめDVD ウィリアム・クリスティー指揮/チューリヒ歌劇場

輸入盤DVD ウィリアム・クリスティー指揮 ヘンデル:《オルランド》のAmazonの商品頁を開くでは、この作品のDVDとなりますと、今現在は手に入るものは一つで、輸入盤DVD ウィリアム・クリスティー指揮 ヘンデル:《オルランド》。2007年チューリッヒ歌劇場のライヴ映像です。

指揮&演奏:ウィリアム・クリスティー指揮/チューリヒ歌劇場 Orchestra "La Scintilla"
演出:Jean-Daniel Herzog
仕様:リージョン・コード0/NTSC
言語:歌唱はオリジナル通り、イタリア語。字幕は伊、英、独、仏、西。

字幕については、パッケージに記述がないながらも日本語も入っていました!

La Scintillaはチューリヒ歌劇場のオーケストラのメンバーから選別して、バロック期から古典派までのオペラを取り上げる為に、演奏方法等々当時の様式を学んだ楽団(チューリヒ歌劇場websiteの説明はドイツ語のみでした)。

配役は何人か読み方がわからないので、原語で統一すると、

オルランド:Marijana Mijanović
アンジェリカ:Martina Janková
メードロ:Katharina Peetz
ドリンダ:Christina Clark
ゾロアストロ:Konstantin Wolff

さて、このDVDでの演出の大きな特徴は、舞台を第一次大戦期の上流階級の設定に持って来ている事。オルランドは、武勲を立てた兵士で、ゾロアストロはお医者さんという設定。メードロはアンジェリカの屋敷に出没するいかした間男。

そうすると、歌詞でオルランドが英雄であり、メードロがアフリカの王子とあることが、ちょっと判らなくなり、アンジェリカもかなり尻軽な性格にふられておりますが、その辺りは百も承知な上で、どうやって舞台を移したかを楽しもうというものなのでしょう。

演出もアンジェリカとドリンダの喧嘩のドタバタもあったりと、かなり軽やかでコミカルで、ややエロティック。CDで楽しんでいた方など、「こんな読み方もあるのか」と好き嫌いはともあれ、印象がいろいろ変わると思います。

最後の場面、本来はアンジェリカとメードロを殺めたオルランドが、ゾロアストロの魔法で理性を取り戻し、殺めた二人もよみがえって、八方まるくおさまった最後の合唱・・・となるところですが、この演出のゾロアストロが医者という設定で、どう処理するかがちょっと面白い所。最後の合唱も、現代人には唐突すぎると思ってか、皮肉を持ち込んで変わった終わらせ方をしています。

新しいだけの演出かといえば、当時はアリアが終わる度、歌い手が舞台から扉を開けて引っ込んだそうですが、その辺りは自然な形に見せながら、うまく全編で約束事を守っています。

歌手では、ドリンダのChristina Clarkがエモーショナルで一番感心しました。オルランドは、現代では標準のスタイルの一つで、アルトの女性歌手に歌わせますが、ここが評価の分かれ目かもしれません。DVDで観客は、Marijana Mijanovićに大きな拍手を送っていましたが、彼女の声質も手伝って、オルランドに華やかさがないと感じる方もあるやも・・・この辺りも、百も承知な上で、楽しむものなのでしょうか。
なおメードロが少し弱かった気がしますが、観客の拍手もやや少なめでした。

******

DVDですと、カット割りがやたらに多かったり、カメラがどこからとっているかが判らなくなると、結構、気になるものです。本作品は、比較的遠目の長まわしで、クローズアップやバストショットも適度に収まっていると思います。

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好き嫌いは、DVDだと特に演出のゆえに別れやすいもの。ただ一度舞台もののDVDで見ておくと、その後、CDを聞いても自分の考える演出で、あれこれとさまざま想像を膨らませやすくなると思います。ご興味あればお試しを!

わたしの場合、CDではあまり気づいていなかった戯れの要素がよく判って、なかなか面白いものでした。

では!

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posted by sergejO at 17:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作曲家の誕生日です!
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