本日はモーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)の誕生日。
かくなる次第で、ここ連日ヘンデル関係の記事を書いて居り、あと一つ残すのみでしたが、今回と次回はラヴェルのお話で!
本日は、ラヴェルのおすすめ書籍のご紹介。
書籍を読むのは結構億劫かも知れませんが、作曲家自身の言葉や時代背景が判ると、親近感も増したりするものですし、おすすめの曲なども判りますから、ぜひ一冊・二冊はお読みいただければ!と思います。
当方も、今回のラヴェルに限らず、そういった目的に適う良書を紹介していければ・・・と考えて居ります。
ラヴェルおすすめ名著 その1:マニュエル・ロザンタール著『ラヴェル―その素顔と音楽論』
昨年のこの機会に簡単にご紹介したのは、ラヴェルの弟子で作曲家・指揮者であったマニュエル・ロザンタールの回想録『ラヴェル―その素顔と音楽論』。
今一度ふりかえってみますが、この著作は晩年のラヴェルの年若い弟子として身近に居たロザンタールが、自ら体験したエピソード、ラヴェルの語った言葉を紹介していて、大変面白い著作。
ラヴェルというと、「知的」、「クール」、「簡素」、「あまり感情を表に出さない」、はたまた「エキセントリック」といった言葉が浮かぶかと思いますが、この著作を読むと、ロザンタールへの心遣い、老いた母親を思う心、社会に対する考え等々、ロザンタールの主観を介した報告と一歩控えてみても、やっぱり人間ラヴェルへの親近感がまして、「この人が判った!」という心持ちになるのでは?
ただいま、古書しか手に入りませんが、リンク先の価格も悪くないですし、250頁で大変よみやすいので、ぜひご一読いただきたい書物です。
昨年、この中からもっとも印象にのこったラヴェルのエピソードをご紹介しておりますので、お時間があれば。
ラヴェルおすすめ名著 その2:アービー・オーレンシュタイン著『ラヴェル―生涯と作品
本日、ご紹介するアービー・オーレンシュタイン著『ラヴェル―生涯と作品』は、個人的な回想録ではなく、一般的な解説書。といってもこちらも読み易く、私も一気に読んでしまった300頁弱の書籍。
前半の第一部が伝記、後半の第二部が主要作品解説となっております。
第一部 伝記と文化的背景は、ファクトを重んじる記述で、ラヴェルの生涯を大まかに知っていないと、筋道を失いかねませんが、音楽学生時代の成績表の詳細など細かい内容まで興味深いものです。
作品に関するラヴェルの言葉の引用はもちろんのこと、初演時の聴衆や他の音楽家の反応などの記述も豊富で、作曲家として当時の音楽界で、どう活躍していたか、どう受け止められていたかがよく伝わります。ラヴェルだけでなく、ドビュッシーその他同時代の作曲家との関係などもちゃんと目配せしております。
客観的で、簡潔な記述も多いのですが、上述のロザンタール著『ラヴェル―その素顔と音楽論』と併せて読まれると、傾向の違った著作が相助け合って、活き活きと想像できることが増える・・・とそんなことを考えます。
さて、この伝記部分と同じ程、ないしはそれ以上に長所であるのが、第二部 モーリス・ラヴェルの芸術。これは、主要作品解説で、管弦楽曲、ピアノ曲、声楽曲その他をひたすら60曲以上、作曲年代順に説明。ラヴェルで聴いてみたい曲を決めるに大変便利。
記述は比較的長めで、ラヴェルの曲同士の関連は勿論、他の作曲家や民謡との関連も記述。当該曲の作曲時のラヴェルの言葉なども、ちりばめられて居ります。わたしのように音楽の専門的素養がない者にも、楽しめる内容でした。もし、欠点があるとすれば、「どの曲も聴いてみたい!」と興味をそそられることでしょう。
この第二部の最後に、創作過程と題した一章が設けられて、ラヴェルの手書きスケッチを幾つか提示しながら、ラヴェルがどうやって作曲をすすめていったか、試演後にどういった修正をしたか、その特徴を簡単に説明しています。十数頁の短い章で、取り上げた曲もごく一部のみながら、音楽的な素養のある方には、楽しい章と思います。
巻末には、作品目録がちゃんと収録されています。これがなかなか詳細で、
- 作曲年
- 出版年
- 自筆譜の保存先
- 献呈の相手
- 初演時の場所・初演の演奏者などかなりの詳細
- 編曲版についての類似情報
が記載されています。原語であるフランス語の曲名が併記されているのが、輸入盤を探す方にはありがたいことでしょう。些細なことですが、結構、重要なことです。
ラヴェルをいろいろ聴いて行くにあたって、便利なコンパスにぜひどうぞ!
次回は、ラヴェルの名盤をご紹介したく存じます。
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余談ながら、Look4Wieck.comのAmazon.co.jp検索機能に、ラヴェルの主要表題作品目録も作って居りますので、ぜひ便利にご活用下さい。今現在、34曲ほど収録しておりますが、一つ一つの曲名でも検索結果がでてくるのは、大体あのくらいです。
後は、管弦楽曲集、ピアノ曲集、声楽曲集、などのセットもので探されるのが良いかと存じます。
では!