本日は、大井浩明氏のピアノ・リサイタルで、東京は四谷のコア石響(しゃっきょう) カノンホールに言って参りました。
コア石響は、四谷駅を降りて迎賓館を左に眺めながら、学習院の裏手にいったところにございます。レストランのオテル・ドゥ・ミクニをもう少し奥に行った所。大体、40余畳ほどの広さでしょうか。
バッハの《フーガの技法》と現代の日本の作曲家の方々の作品を交互に並べてのコンサートで、楽器は現代ピアノのYamaha CS3。
作曲家さんご自身も見えていらっしゃって、3時間弱(!)の演奏のあとにちょっとしたスタンディングでお酒ありの歓談会もありました。
大井浩明 2009年3月15日 コア石響コンサート概要
J.S.バッハ《フーガの技法》 BWV 1080 第1番〜12番とカノン、未完成のフーガ、コラール前奏曲の21曲
小出稚子:《ヒソップ》(2008、東京初演)
川上統:《閻魔斑猫》(2008、東京初演)
清水一徹:《老人の頭と鯨の髭のためのクオドリベット》(2008、東京初演)
鈴木光介:組曲《Even Be Hot(ホットこともありえます)》(2008、東京初演)
鈴木純明:《白蛇、境界をわたる》(2008、東京初演)
有馬純寿《琥珀のソナチネ》 (2009、東京初演)
曲順その他、詳細はピアニストのwebsiteをどうぞ。
大井浩明 2009年3月15日 コア石響コンサート感想
昨年夏のピエール=ロラン・エマールのリサイタルで聴いて以来、久しぶりにバッハの《フーガの技法》。
エマールの時は、きらびやかなピアノの音を楽しんで、途中私がボケなので迷子になってしまい、どちらかというと、派手に響くカーターの現代曲を楽しんでいましたが、本日はボケの私でも、迷子にならず曲の展開が楽しめました。
大井氏は、昨年初めてコンサートに行って、録音も幾つも聴いて居りますが、うっとり没入なんてタイプではなく、音楽はこう進んで、、、ここがこうなって、こんなところは面白いぞ、、、と、そんなことを語られているような印象を受けます。二時間の予定が三時間で、楽そうな曲はないですから、体の使い方など色々秘密があるのでしょう。置いた譜面を眺める目つきが大変鋭いです。
男性的、、、なんて言い方は、強い女性を見ている現代ではもうおかしな響きになりますが、うっとりなよなよ感情に訴えるより、音楽で勝負といいますか、なんかこう上手い言い方が見つかりませんが、そこがすがすがしい気も致しました。
といって、クール一辺倒でなく、《フーガの技法》が見事にドラマティックになっていて、これも何と言っていいのか判りませんが、音楽は音楽のまんまで感情の言葉を無理矢理付けなくても、十分にドラマティックなんだな、、、と関心しておりました。
現代曲は、小出稚子女史の《ヒソップ》がちょっとかわいらしいというか、ちょっと弾き方を変えると、どこにでも気軽になじめそうな・・・鈴木光介:組曲《Even Be Hot(ホットこともありえます)》が、タイトルがBeehovenのアナグラムで、曲もそういったもの。なじみのソナタがいろいろ変容しておりました。
しかし、リサイタルも長くなり、後半に行くほど、記憶があやふやで・・・小生、大体2時間くらいで、集中力があやしくなってくる者であります。
・・・あと、コンサートと関係ある様なないようなですが、石響ホール側の主催者さまでしょうか、喫煙所でのお話おもしろうございました。
大井浩明 おすすめCD
京都では、ベートーヴェンのソナタ全曲公演を開いてらっしゃいますが、昨年からCDも出して居り、弊ブログでもご紹介しております。
フォルテピアノでの演奏で響きは、現代ピアノではやはり得難い面白さがありますし、昔のドイツの名人を聴いているような楽譜の読みを感じると申しますか、ところどころユーモアにも溢れて居りますので、今からベートーヴェンのソナタを聴かれたいという方には、ぜひどうぞ!
その際、新発売と予告だけしておりました大井浩明(P) ベートーヴェン:交響曲第1番&第2番(ピアノ版:リスト編曲)も面白いアルバムでした。いま、オーケストラでもこういう風に弾いてくれるところないなぁと。初期の交響曲である、第1番&第2番が「あんまり面白くない」と感じていたかたには、ちょっとお試しを(まったく個人的な話ですが、第8番がどうなるのかすごく興味があって、待って居りますっ。)
・大井浩明(p) ベートーヴェン:ソナタ第4番、第8番《悲愴》、第19番&第20番
と冒頭に写真を挙げた、本日の曲目でもある
・大井浩昭(P) バッハ:フーガの技法 BWV.1080 [全21曲]
ベートーヴェンのソナタは、有名な曲ばかりでなく、マイナー曲もぜひどうぞ!親密な曲、かろやかでうっとりさせる曲、かわいらしい曲もあって、ベートーヴェンの印象ももしかしたら大きく変わるかも知れません。
バッハの《フーガの技法》は、ベルギーのヨリス・ポトフリーヘさんという方が製作したクラヴィコードを使用。これもちょっと珍しくて興味を引く所。
マイナー/メジャーも別に内容とは関係ないこと。日本の演奏家の方にも、興味をもって頂ければ幸いです。
では!
関連のおすすめ:
◎ バッハの書籍
・鈴木 雅明(インタビュアー:加藤 浩子)『バッハからの贈りもの』
バッハ・コレギウム・ジャパンの指揮者&チャンバロやオルガン奏者である、鈴木雅明氏の著作。前者は、内容も大変読み易くて、「バッハのさまざまな音楽を聴いて行こう」という方には、うってつけの道案内。
後者はそれに比べれば専門的な内容ですが、合唱曲とオルガンについて、欧州での歴史的・文化的背景をさまざまに考えさせてくれる好著です。
◎ ベートーヴェンの書籍・平野 昭『ベートーヴェン カラー版作曲家の生涯』(新潮文庫)
両著とも良い伝記です。前者はベートーヴェンのさまざまなジャンルの作品を聴いて行くのにも良い道案内。後者は写真も豊富で、はしがきにときどき出てくるベートーヴェンのジョークが愉快です。
『音楽ノート』は手紙以外のベートーヴェンの手記の拾遺集。我々が幾つも知る感動的な言葉に溢れています。音楽家が、そうやって自らを叱咤激励していたさまが伝わってくる感銘の書籍です。
ザスロウのモーツァルト交響曲の本も和書では手に入らないので、サーチを活用させて頂きました!
・・・ああ、預金が。。。
お買い上げ深謝!