2009年03月23日

NHK BS2 オーケストラを守れ 〜 ノルウェー放送管弦楽団の奮闘 / 『芸術の売り方 劇場を満員にするマーケティング』

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ジョアン・
シェフ・バーンスタイン著『芸術の売り方 劇場を満員にするマーケティング』のAmazonの商品頁を開く昨晩深夜、NHK BS2で放送された『オーケストラを守れ 〜 ノルウェー放送管弦楽団の奮闘』を見ました。2008年制作のドキュメントで、主役はノルウェー放送管弦楽団(楽団のwebsiteにリンクしております)

スポンサーの放送局から、1年以内に収益を上げよ!さもなくばというお達しがくだされて・・・「異色のドキュメント」とのことでしたので期待しておりましたが、折角の題材にもかかわらず、具体性がなかったのが少しく難点でした。言えないことも多々あるでしょうが、残念と感じたところ・・・

・年々商売が傾いているのが、実際数字でどうなのか、観客が減ったのかなんなのか原因もよく判りません

・新しく読んだ主席指揮者グプタ氏が、芸術監督も兼ねたものの、強引なやり方でオーケストラと反りが合わず。と言いますが、なにが強引なのかよく判らず(現代音楽やったのがいけなかったのでしょうか?)。

・初めて呼ばれたマーケティング担当者は、仕事を干されているようで、バカバカしくって辞任。なぜ彼が干されているかも不明。

・オーケストラはなにかと反対し、結局、グプタ氏が気に入らないようで、その契約を作った事務局長に非難。指揮者グプタ氏との契約延長をしない決議を出し。

・事務局長もお疲れさま〜で、辞任だか、解任だか。

そんないざこざの様子を、国内海外公演の映像をまぜて映し出しながら、最後は、ポップミュージシャンの後ろで、楽しく・簡単な曲を楽しそうに弾いて、オーケストラはそれがやりたかったとでもいうような見せ方でした。それで、「いろいろあった一年だった」と各自のコメントを出した最後に、文化庁だかなんだかから支援金を貰って楽団の存続はかなった・・・と。

どうも一事が万事、ことの始まりからコミュニケーションが悪かったのは判るのですが、折々のミスコミュニケーションを見せるだけで、それを改善しようとしたのかしてないのか、なにが問題でできないのか、全然突っ込まないのでもどかしく感じました。出せない内容はあると思うのですが、ドキュメントの原題が「Get the Money and Play」というからには、実際に何かの実践事例が映し出されるだろう・・・と期待倒れでした。

ジョアン・シェフ・バーンスタイン著『芸術の売り方 劇場を満員にするマーケティング』

ジョアン・シェフ ・バーンスタイン著『芸術の売り方 劇場を満員にするマーケティング』のAmazonの商品頁を開く・・・と、肩すかしに合った方へ!こういう分野でちょっと面白い内容の書籍が、ジョアン・シェフ・バーンスタイン著『芸術の売り方 劇場を満員にするマーケティング』 。既にお読みになった方もいらっしゃるのでは?私は、kenさんに教えていただいて先日読み終えたところです。

アメリカの典型的なマーケティングの本で、ターゲット客層をどう設定するか、彼らにインターネットを使ってどう新しくアプローチするか、既存の手段もなにか改良できないか・・・マーケティングの手法としては目新しい物はないですが、クラシック音楽というジャンルの中で具体的事例がさまざまあって「アメリカでもそうなのか」・「アメリカでもそうなのか・・・」、翻って「日本はどうだろう・・・」と思いめぐらす切っ掛けを得る書籍です。

ちらっとした指摘の中に、考えさせれることもあります。例えば、そもそも「クラシック」なんて位置づけがおかしくはないか?みな高度な知識を前提にしていて学術的に迫るけれど、「最初にその曲を聴きたいと思う興奮」・「なぜそれが好きになったかという素朴な感動」を伝えることがなさすぎでは?こんなことも、今更ながらやはりそうだなと。

ちょっと笑ってしまったのが、お客さまアンケートのとある言葉の引用。でも、これは実は大事なことと感じました。

ちょうちん記事をどうやって見分けるのかがわかるには何年もかかりました。ほとんどの宣伝文句は〈驚くべき〉とか〈刺激的〉〈ドラマチック〉〈忘れられない〉です。昔はそれを信じていました。みんな誇大広告だったのに。
p.132-133

では、どういう言葉なら的確な批評になるか、日々自分も紹介しながら頭を悩ませ、全然うまくいかない難問です。実は的確な批評は、本業の方にこそ求められそうですが、余計なことには口を憚るのは当たり前で、これはなかなか難しい。

では、一観客の意見はどうかというと、たかが一観客のブログが率直に感想を言っても、中傷だなんだと罵声を浴びることも山々。面倒だから褒めるものしか取り上げないという方も多いのではないでしょうか?

それで誰それを彷彿される巨匠が続出して、マーラーの神髄や、孤高のベートーヴェンが毎夜コンサートで奏でられる状態は、それはそれでいいのかどうか・・・わたくしにもよく判りません。

丁寧な言葉遣いで疑問を呈する・・・といったことくらいは一般的になるべきだと思いますが如何でしょう。文句ばかりだと、読み手もつかないので、誉める内容との兼ね合いは書き手のバランスやセンスの問題。自然とどうとでもなるものでしょう。

******

本書に関しては、要望があるとすれば、

・今現在の観客とクラシックの関係の統計的データ(年齢層や所得、学歴等々に分けての、聴かない理由、聴く理由、聴いた切っ掛け、どこで聴いているか、CDや音楽データの所蔵数や支出金額等々)
・プログラムに関する観客の好み

があればもっと面白い内容になったかなと。

前者に関して、多少は触れられて居りますが、細かなデータでないので、なんともでした。大事なデータなので、「そこから先は、著者のコンサルティングを」としたいように推察致します。

後者に関しては、人気のある・ききやすい・なじみのある曲を観客は好むので、そこを狙えという定石がベースではありますが、それがどんな曲かについては情報無し。といっても、変わった冒険的なプログラムを組むにはどうすべきかを考える端緒にも触れています。

これについて思うのは、本来観客は与えられたもの、聴きやすいものばかりでなく、たまには違ったもの、取っ付き難いものでもぶつかってみるという習慣が大事で、主催者・演奏者側だけで変えられるものでもない・・・と思いました。

音楽の話だけではなくて、書籍だったら、ベストセラーばかり見ずに、書店の本棚をくまなく眺めてみる。ポップスなら、例えばBest盤を聴くのでなく、敢えて一枚一枚のアルバムで聴いてみる・・・友人・知人にいろいろ話をしてみる。そんなちょっとした方法で、随分、見晴らしも変わるものかなぁと。

最後にシューマンの言葉から(ロベルト・シューマン著『音楽と音楽家 』)。

ロベルト・シューマン著『音楽と音楽家 』のAmazonの商品頁を開くビスケットやお菓子のような甘いものでは、子供は健全な大人に育てられない。精神の糧も肉体の糧と同じく、素朴で力強くなければならない。大家といわれるような人は、このことに十分気を配っていた。こうした栄養をとること。
p.197

初めてきいただけで曲を判断しないこと。最初に気に入ったものが、かならずしも一番良いものとは限らない。大家は研究されたがっているのだ。非常に年をとってから初めてわかるものも、少なくない。
p.201

自分も実践まではできてなくて、気にするだけであります!



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posted by sergejO at 14:45 | Comment(2) | TrackBack(0) | TV番組から
この記事へのコメント
「クラシック」音楽のマーケティング全般、とは言えないとは思っていますが、オーケストラのマーケティングは、難しいですね。既に規模から言って、助成金を前提にしないと(でなければ「裏金」?そういう政治的なのはイヤですが!)財務が成り立っていない。そこはデータの明記された数少ない本ではアメリカも日本と似ている、ように見えるのですが、そうではなくて日本がアメリカに似せたんでしょうね。
財務関係の資料は残念ながら一般向けが少なく、団員さんにもどの程度開示されているのか分かりません。
行政からの「助成」を乞わないでも成り立つ方法に対する、運営者の工夫が欲しいところですね。
この番組、BSが見られる環境だったら見たかったなあ・・・
Posted by ken at 2009年03月23日 22:18
>この番組、BSが見られる環境だったら見たかったなあ・・・

番組自体は、指揮者(なんてわがままな楽団だ。コミュニケーションがとれない)、マーケティング担当(おれは蚊帳の外)、楽団員(指揮者が強引。事務局長がそもそも悪い)、事務局長(あたしゃ疲れた)と、じゅんぐりにぼやいている姿を映すだけで、なんともでした。
・・・としか、見えないわたしの読み取り不足か!?
Posted by sergejO at 2009年03月24日 00:11
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