2009年03月25日

ベラ・バルトークのドキュメントDVDおすすめ After the Storm:American Exile of Bela Bartok

このエントリーを含むはてなブックマークBuzzurlにブックマークこの記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録

輸入盤DVD ドキュメント After the Storm:American Exile of Bela BartokのAmazonの商品頁を開く本日、3月25日は、ハンガリーの作曲家 ベラ・バルトークの誕生日(Béla Bartók 1881 - 1945)。数日にわたって、バルトーク関連のおすすめCD/DVD/書籍等ご紹介したいと思います。

本日ご紹介するのは、昨年初秋にリリースされたドキュメントDVD。

輸入盤DVD ドキュメント After the Storm:American Exile of Bela Bartok

タイトルを訳せば、「嵐の後で:ベラ・バルトークのアメリカ亡命生活」。

ドイツ第三帝国占領下のハンガリーにおいて、意図に反して大作曲家として、それなりの待遇を受けていたバルトークが、道義的ないしは政治的信念に基づいて、北米に亡命したのは1940年。

このドキュメントは、北米亡命後からその死までの5年間を扱いますが、晩年の作品から入るバルトーク入門としてなかなか優れたもので、バルトークをよくご存知のファンにとっても興味深い映像があって、大変おすすめです。

BBCとMTV ハンガリーほかによる1989年の共同製作で、今現在、輸入盤のみですが、All Region NTSCなので、日本での視聴は問題ありません。

ベラ・バルトークのドキュメントDVD After the Storm:American Exile of Bela Bartokの内容

冒頭、故郷ハンガリーに埋葬されるバルトークの棺。死後40余年経った1988年、漸く流浪を終えたバルトークの北米での生活はどのようなものだったのか・・・

バルトークの次男で両親を追って単身アメリカに渡ったピーター・バルトークへのインタビューを主軸に、1940年から1945年までのバルトークの北米での足跡を辿ることが本DVDの本筋です。その他インタビューに答える人物は、長男バルトークJr(最初の妻 マルタ・ツィーグレルとの間の息子)、バルトークのマネージャー、ニューヨークのハンガリー人団体に勤務していた女性、バルトークの主治医、近所の住人等々。

勿論、この時期の傑作の紹介もあり、管弦楽のための協奏曲、ヴィオラ協奏曲、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、ピアノ協奏曲第3番が背景に流されることは勿論、また演奏模様も映し出されます。主な演奏家の出演者は、指揮者ゲオルグ・ショルティ、ヴァイオリニスト ユーディ・メニューイン、ピアニスト ジェルジ・シャーンドルとバルトークにゆかりのある人物。彼らはバルトークの音楽を演奏するだけでなく、その音楽について、バルトークとの思い出を交えて語ります。撮影時には故人なっていましたが指揮者セルゲイ・クーセヴィツキーのエピソードもちゃんとでてきます。

数々のインタビューと共に、バルトークや関係者の写真が映し出され、なによりも興味深いのは、次男ピーターが実際に訪れて紹介する北米におけるバルトークの数々の住処。ニューヨークの騒音や悪臭に悩まされたエピソード、借りたピアノも取り上げられ、金もなく新しいピアノを買うこともできなかったエピソード、郊外に引っ越して、木々や鳥、小さな虫などに嬉々としていたエピソード等々、すでに知っている話であっても、実際にバルトークが暮らした風景を見せられると印象がよりリアルになります。

アレグロ・バルバロをバルトーク自らが弾く映像も一部出て来ます、これは貴重なものと思います。

一つ、残念なのは、本編ではほとんど英語で会話がなされますが、英語の字幕もついていないこと。ハンガリーに残った長男ベラ・バルトーク Jrへのインタビューがハンガリー語でなされますが、英語字幕が入るのはその時だけです。

『バルトーク音楽論集』のAmazonの商品頁を開くただ、英語はさして難しい単語は出てこず、話すスピードも年配の方が多いので概して中庸です。語られている事実の大半は、邦訳も出ている三つの書籍

でカバーされております。「英語に自身があまりない・・・」という方も、これらの書籍に目を通されてから、ご覧になれば十分ご鑑賞いただけるものと思います。

晩年のバルトークのその人と音楽への興味を十二分に喚起するこのドキュメント。ぜひ多くの方にご覧いただければ幸いです。

追記:もう少し詳細なトピックを幾つかご紹介

上の話だけですと、具体的な内容に乏しいので、わたしが興味を持った部分に関して、幾つかご紹介します。所謂“ネタばれ”もありますが、興味深い話は全般に及びますので、ご海恕被下度(気になる方は、この部分読み飛ばしください)。

バルトークが収録した民謡コレクション:
いまバルトークの収録した民謡のCDなど手に入れ難い状況と思います。短い時間で気休めですが、そこに興味がある方には、ちょっと喜ばしいことかも知れません。

ニューヨークでの出来事:
バルトーク夫妻が、散々な目にあったニューヨークですが、妻のディッタがハンガリー料理を作るので肉を叩いていたら、その音にも苦情が出たというエピソードがありました。下の住民に取っては確かに迷惑なことですが、当時の散々な様子になんともという思いが致します。

バルトークの二度目の妻ディタとの間の子供 ピーター・バルトークは、すでにhigh-teenになっておりましたが、親を追って単身渡米。ニューヨークで両親の家を訪ねて迷っている時、なんだか見覚えのある鞄を持った男が通り過ぎたと思ったら、それがバルトーク当人だった由。

アガサ・ファセット『バルトーク晩年の悲劇』のAmazonの商品頁を開くピーターはこのDVDで主要な案内役となっておりますが、アガサ・ファセット『バルトーク晩年の悲劇』の著作について、大変詳細かつ父親のイメージをよく伝えている書籍とのこと("very faithful presentation of what my father was")。

ニューヨークのハンガリー人団体で働いて居た女性に寄れば、亡命者は数多く、その中にも音楽家は多数。バルトークは著名だったとは言えず、作曲家よりもピアニストとして知られていたそうです。さすがに音楽関係者の中ではそういうことはないかも知れませんが、一般のイメージはそうだったのでしょう。

管弦楽のための協奏曲 Concerto for Orchestra:
病床のバルトークを訪ねたクーセヴィツキーとのやり取り、そして、この作曲を契機にバルトークが小康を取り戻し作曲に精を出したエピソードもちゃんと触れられています。印刷譜に置ける第二楽章のテンポ指示の誤りのエピソードは、ショルティ自らが語ります。

一番面白いと思ったのは、練習の様子を見に来たバルトークの話。「そこは音が大きすぎる!」「それでは早すぎる!」と段々バルトークの注意も熱を帯び、音を上げた(?)クーセヴィツキーが「こうなったら、一通り様子を見て、メモに書いてくれないか」と依頼。バルトークはリハーサルの最中ものすごい勢いで、諸注意を綴っていたそうです。

ピアノ協奏曲第3番:
ピーター・バルトークとジェルジ・シャーンドルが、第二楽章にありのままの自然の音が使われていることを語るのは良い場面です。バルトークは、鳥の鳴き声を書き留めていて、いつかこれを使おうと手紙にも書いて居り、その節がそのまま使われているとのこと。

輸入盤DVD ドキュメント After the Storm:American Exile of Bela BartokのAmazonの商品頁を開く郊外の住処・再びニューヨークに戻って:
郊外で最後に住んでいた家(ヴィオラ協奏曲とピアノ協奏曲第3番を作成を始めた場所)をピーター・バルトークが案内しますが、ぼろぼろの廃屋になっていました。朽ちてすっかり腐った部分もありますが、自然に還るならそれはそれでバルトークらしい・・・とも感じました。
病気から回復したと思ったもののまた具合が悪くなり、狭いニューヨークのアパートに転居したバルトーク。このくだりは短いですが、もっとも痛切な場面。ピータは淡々と語りますが、最後はやはり辛いように見えました。

メニューインによる、バルトークとは:
終盤、再びバルトークの埋葬の様子を映した後の、ピーター・バルトークとメニューインの言葉、そして、バルトークの(多分)手紙の一文は、多分、バルトークを好きな方が皆考える言葉とも思いますが、大変美しいものでした。詳細は、ぜひDVDでご確認下されたく。

******

このDVDで言及された曲とその録音を中心としたおすすめ名盤のご紹介は、下のリンク先の記事をご覧下さい。

2009年のバルトーク特集記事一覧:

・1009/03/27:2009年03月27日 ベラ・バルトークのおすすめ名盤 − 自作自演ピアノ録音集 Bartok at the Piano(Hungaroton CD6枚組)
・2009/03/26:晩年のベラ・バルトークのおすすめ名盤 − 管弦楽のための協奏曲、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、ヴィオラ協奏曲、ピアノ協奏曲第3番

関連のおすすめ:

輸入盤 ゾルターン・コチシュ演奏 バルトーク:ピアノソロ作品集(Philips CD8枚組)のAmazonの商品頁を開く輸入盤 ディッタ・バルトーク演奏 バルトーク:ミクロコスモス全曲(Hungaroton CD2枚組)のAmazonの商品頁を開く輸入盤 ゾルターン・コチシュ演奏 バルトーク:ピアノ作品集(Philips CD8枚組)
ハンガリーのコチシュによるバルトークピアノ作品集。協奏曲等を除いてのピアノ曲全集といってよいもの。ミクロコスモスもちゃんと全曲揃っております。本日現在(2009/03/27)、マーケットプレイスで大半安価な価格がついております(importscd.com)。バルトークの世界を存分に楽しめます。

輸入盤 ディッタ・バルトーク演奏 バルトーク:ミクロコスモス全曲(Hungaroton CD2枚組)
バルトークの二度目の妻で、一緒に北米に渡ったディッタ・バルトークによるミクロコスモス全曲の録音です。

◎作曲家や演奏家の名前から他の記事を探すには:
作曲家から探す / 指揮者から探す / ピアニストから探す / ヴァイオリニストとその他の演奏者から探す / その他の記事(売れ筋ランキングやコンサート評etc)を見る

◎ご紹介した曲や本のジャンル(交響曲かピアノ曲か、伝記か自伝かetc)から探すには:
曲や書籍のジャンルから探す

タイムリーな記事のご購読にはRSSが便利です。
RSS 1.0(RDF Site Summary) / RSS 2.0 / はてなアンテナ
posted by sergejO at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作曲家の誕生日です!
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: ハンドルネーム可です

メールアドレス: 未入力OKです

ウェブサイトURL: 未入力OKです

コメント: ご随意に!

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
Top / 記事一覧:作曲家別 / 指揮者別 / ピアニスト別 / ヴァイオリニストとその他の演奏者別 / その他の記事
Copyright© 2007-2009 sergejo_look4wieck.com All rights reserved.
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。