
この本は、作曲家や周辺人物の言葉や逸話に豊富で読み応えは十二分。読み終えるのは結構大変でしたが、ショスタコーヴィチについて知りたい!という欲求は120%満たされます。ほんとにいろいろな話があって、政治的な党本部との確執、作曲家としての成長はもとより、ピアニストとしての経歴も細かに判ります。
ショスタコーヴィチに関する一冊目と言うより、ある程度、その生涯の概要を知っている方向けと言っても良いかもしれません。526頁の内、伝記部分はおよそ350頁。後の200頁弱は参考文献等々。人名辞典と作品名と人名での索引がついていて、これはかなり便利です。
では一冊目は何を読めば良いのか・・・

この主要作品解説は、ショスタコーヴィチをいろいろ聴いてみようという方には大変役立つ羅針盤となると思います。交響曲作家としてだけでなく、その室内楽、オペラ他の声楽作品もきちっと紹介しているのは、重要なことと思います。
これは音楽之友社の作曲家◎人と作品シリーズの一巻です。このシリーズ、多少の出来不出来はありますが、概して面白いものが多く、伝記・主要作品紹介・作品目録など痒いところに手の届く内容。いまからいろいろ聴かれる方にも、既にいろいろと聴いていらっしゃる方にも、興味深いものと思います。Look4Wieckに音楽之友社の作曲家◎人と作品シリーズの既刊書をまとめてリンクをつけた頁がありますので是非ご活用ください。
もう一つ、一冊目の候補があります。

その中にでてくるエピソードで私が好きな話を一つご紹介致します。生活の足しにと映画音楽を書いていた頃のことなのですが、映画のプロットのメモが送られて来て、そのシーンに見合う音楽を要求の時間に合わせて作曲するという仕事。ショスタコーヴィチもあまり好きではないけれど、生活のためだと割り切ってやむなくといった事情のようです。
さて、とある日に送られたきたメモにバスのシーン何分、なになにのシーン何分と続いた後に、“白い静寂 3分”と。
「白い静寂?どうやって音楽で表現しろっていうんだい?」
と苦笑していたそうです。
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ショスタコーヴィチのこういった映画音楽をまとめたCDも出ています。売れ筋はシャイー指揮のものと言ってよいかしら?映画音楽のほか、Jazz音楽集、ダンス・アルバムなどもあって、いわば三部作になっています。

リッカルド・シャイー指揮 / ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団他
・国内盤
・輸入盤

リッカルド・シャイー指揮 / フィラデルフィア管弦楽団他
・国内盤
・輸入盤

リッカルド・シャイー指揮 / フィラデルフィア管弦楽団他
・国内盤
・輸入盤
流行曲風にしては手が込んでいたり、諧謔風味や、優しさを感じるようなパッセージにショスタコーヴィチらしさを見つけたり。意外!な曲もあって、稀代の傑作とは言わないまでも、なかなか面白いものでした。
たまには肩の力を抜いたショスタコーヴィチも如何でしょうか!