逸話と言えば、ゲーテがとある夜会で、「若いんだからご婦人連の輪に入ってらっしゃい」とメンデルスゾーンの背中を押したという話も、ゲーテの人柄が知れるばかりでなんなのであります。
曲調自体も、例えば、同時代のシューマン、ショパン、リスト、ワーグナー等々がそうであるのに比べれば、「これがメンデルゾーンだ!」という臭いに欠けてしまう感じがするのは私だけでしょうか?とは言え、先日再読したドビュッシーの音楽評論(手の内が見え透いているといった感じの否定的意見)にせよ、グールドの評論(こっちは手堅く端正な職人仕事と賛美)にせよ、プロの人が譜面を見ると「まさに彼らしい」というものがあるようです。
さて、そんな鈍感の私にもメンデルスゾーンならこれが好きっという曲があって、それは交響曲第4番 イ長調《イタリア》!メンデルスゾーンが二十歳そこそこでイタリア旅行したのを契機に数年かけて書き上げた曲だそうです。
溌剌としていて、こういう曲はメンデルスゾーンの自分のイメージにはぴったりです。そもそも、《イタリア》とヴァイオリン協奏曲でイメージを作り上げてしまっていますが・・・
この曲は結構だれで聴いてもそれなりに面白いのですが、あんまり逼迫しないリズムがいいとか、このバランスがどうのと言い出すとまたいろいろ難しいのは世の常で、、、こんなことは趣味の問題だから千差万別当たり前ですが、、、「なかなかグッとくるのがないな〜」と思っている中で漸く見つけた二枚をご紹介致します。
昨日、アーティキュレーションとは音楽に生命を与えることであるというチェリビダッケの言葉をご紹介しましたが、どちらもそれにぴったりの見事!!な演奏。
一つはレオポルド・ストコフスキー、長い生涯の最後のレコーディングで1977年4月に録音されたもの。オーケストラはNational Philharmonic Orchestra。元はソニーレーベルの所有ながら、絶版状況なのでレオポルド・ストコフスキー協会がCalaレーベルで再販している一枚ものです。この時、ストコフスキーは95歳を迎えたか迎えようとしていたかですが、ゆったり洋々となんてことはなく、びっくりするくらい溌剌の演奏です。
もう一枚は、ヨーゼフ・クリップスのデッカ録音集1950-1958(5枚組)に収録されているロンドン交響楽団を振った1953年の録音。先日、モーツァルトの誕生日の記事でちょっとご紹介したものです(写真は米国Amazonのものを借りていますが、リンク先は日本のAmazonです)。両者で比較すると、ストコフスキーの方がほんの少しの心持ち程度テンポが早目ですが、どちらも気持ちのいい溌剌さです。録音の問題もあると思いますが、ストコフスキーはクリアーで広がって行くような印象。高音部が転がって行く曲ですが、低音を強調して重厚に広がりを持って響かせ、全体的にカラフルで気持ちいい!です。
クリップスの方は、透明性というのではないのですが、各楽器・各声部のバランスがいいのではないでしょうか?そういう意味でクリアーで、旋律の絡まり合い、和音の掛け合いがはっきりわかってこれも何気なく聴き始めると、結局、集中してしまう自分にいつも気づかされます。バランスがいいからと言って、安全運転でおさめてるなんて風ではありません。この曲のことをこう理解して、こう作っているというのが判るようで、それが結構手がこんでいると思うのですが、「そうそうそう!」と思わずのってしまいます。
両者に共通なのが、アーティキュレーションが音楽に生命を与えていること。細かいところは勿論全然違うのですが、クリップスにせよ、ストコフスキーにせよ、なにか言葉で語られているように生々しさと申しますか、情景が浮かぶといいますか・・・でも、直接、あの言葉やあの景色がでるわけでは無いので、音楽が語る・音楽が描くってこういうことなのかな〜と思っています。
この二つは、方や1枚もの、方や5枚組ですが、どちらも併収の曲のできがまた素晴らしいです。
ストコフスキーのカップリングはブラームスの交響曲第2番。こちらはカラフルにして透明感があるのはメンデルスゾーン同様ですが、当然曲調はのびやかになります。私は結構ブラームスの2番は苦手にしていますが、この録音を見つけてからは、これと、、、フルトヴェングラーで聴くことが多いかな・・・?のびやかといっても緩慢になることなど全然なく、95歳の老大家が振ったとは思えないさわやかさ・若々しさです!
クリップスは5枚組ですから、カップリングの曲はさまざまあって、ハイドンの交響曲第94番・99番、モーツァルトの31番・39番・40番・41番、シューベルトの未完成交響曲、シューマンの4番、ブラームスの4番、ドヴォルザークのチェロ協奏曲(ソリストはザラ・ネルソヴァ)、チャイコフスキーの5番他と入っています。それがどれも見事!な出来です。
クリップスはなんとなくこじんまりとした地味な指揮者と思ってしまいますが、シューベルトの未完成などすごく深刻で厳しいドラマになっていて、びっくりします。フルトヴェングラーが好きな方が聴いても、楽しめるんじゃないかしら?強音をかなり強めに入れて、幻想的でなだらかなというより、ハ長調 D.956の交響曲に直接つながる世界を作ります。
シューマン、ブラームス、チャイコフスキーと誰にせよ、派手なことはないんですが、実にいきいきと語る音楽。ハイドンやモーツァルト指揮者の印象が強いですが、ロマン派のクリップスも私は大好きですし、このセットを買って聴いて相当驚いて、一晩聴き続けてしまいました。いまでもどれか一枚聴くと、次はこっち、あっちとなることが多いです。
レオポルド・ストコフスキーとヨーゼフ・クリップス、どちらも機会があればぜひ!お試しください。
ではまた明日!














せっかく「イタリア」がお好きであれば、彼の「八重奏曲」もお聴きになってみて下さい。・・・いや、もうご存知でしょうね。
音楽的にもシューマンと同時代、と捉えてしまうと、メンデルスゾーンの透明感は「謎」になってしまいます。彼は、シューマンやリストに比べると古典を継承した明朗な音楽を目指した「正統派」で、そう言う点ではベートーヴェンを間に挟んで考えてはいけない対象ではないかと思います。メンデルスゾーン自身、ベートーヴェンをゲーテに認めさせようとした、との逸話が有名なので、誤解が生じやすく、可哀想かも知れません。「フィンガルの洞窟」や「スコットランド」、ヴァイオリン協奏曲でも、ベートーヴェン路線ではない構造であるところに着目すれば、結構輪郭のはっきりした作曲家じゃなかろうか、と、私は思っておりますが・・・
すみません、とんだ飛び入りでした。
ちなみに、私の好きなのは、若き日のサヴァリッシュが「ベートーヴェンやブラームスの録音はさせてもらえない」と愚痴りながら、一生懸命取り組んでいたメンデルスゾーンとシューベルトの交響曲全集です。シュターツカペレドレスデンとの演奏でしたが・・・CDにはなっているのかなあ?
いえいえ、私の知識だけだと限界があるので助かります!
>ベートーヴェン路線ではない構造であるところに着目すれば、結構輪郭のはっきりした
そこなんです。楽譜を検討しない聴くだけの自分には、書法的にはそうなの
だろうけど、曲全体としては、というか曲調としてはというか、曲の描いて
いることとしてはと言いますか、そういうところでは、べートーヴェンを経過
しているようにしか聴こえない。「変奏曲ですよー」と楽しませるとか、
「フーガですよー」と楽しませるとかするだけにはなってないように、
聴こえちゃって、「で、なんなの???」と。「そういう人なんです」と言われ
たら、それまでなのですけれど・・・
聴けば、標題楽的じゃないのはわかるけれど、《イタリア》だの
《宗教改革》だののニックネームを完全にとってしまうのも座り
心地が悪い・・・で、なんだか煮え切らない感があるのかなと。
曖昧な言い方しかできないですみません!
>彼の「八重奏曲」もお聴きになってみて下さい。・・・
あーーその手がありますね!来年の誕生日にはそれで!
今回は余裕があればヴェイオリン・ソナタも取り上げようかと思いましたが、
クリップス&ストコフスキー普及委員に終始致しました。
ストコフスキーが最晩年にCBSに録音した音源は彼のファン以外からも高い評価を受けているものが多いですから、引き続きcalaには期待しております。(もうひとつの最後の録音であるビゼーも95歳とは思えないくらいの若々しい名演なので、早く復刻してほしくてたまらないです)
ほんとにこういう演奏は、いろいろ輸入盤にわけいっていかないと出会いにくいものですね。
ストコフスキーの94歳の映像あるのですか!?見たいです。。。
CBSも結構なんでそれが?というお蔵入り多いですよね。ストコフスキーなら昨年は没後30周年で出しやすかったでしょうに・・・
そのビゼー聞いたことないので、再発になったら聞いて見ますっ。The Stokowski Societyに投書しようかな・・・
「イタリア」・・・冒頭の旋律だけ覚えていて、それから約10年後位に曲名の一部「イタリア」だけが解り、やっと、今、作曲者と、曲名がわかりました。曲と出逢って感動し、かれこれ21年たってしまいました。
わかってよかった!!ありがとうございます。メンデルスゾーンの曲だったとは・・・。
先日、病院の待合室のヒーリングDVDでメンデルスゾーンは裕福だったけどユダヤ系だったので、それなりに苦労したとかテロップでながれていました。私には初耳でした。
曲名の一部ですとか、「あのCM」「あの映画」などのヒントで結構探せるものですので、もしそういう疑問が他にも出て来た際には、どの記事でも大丈夫ですので、いつでも訊いてくださいませ。