歌手を広くバランスよく紹介している良書が軒並み絶版なのはなんなのですが、Amazon.co.jpでも古書として取り扱われていますし、ちょっと大きめの古書店街に行けばみつかることと思います。

刊行時、吉田秀和氏が推薦の上、書評も書かれたので、お覚えの方も多いのでは?
随分売れた本のようで中古書籍が随分安く手に入ります。私自身中古で手に入れました。あんまり安いので駄本なのかと疑いましたが、むしろ面白すぎて一気に読んだほどです。
『思いっきりオペラ』の初版は1993年。すでに15年も経っていますが、いまだにオペラ鑑賞の良書として推薦できる内容と思います。ソプラノってなに?テノールってなに?という素朴な疑問から、オペラの名作・名録音紹介と、内容は盛り沢山。はじめてオペラを聴き始めた方が持つさまざまな疑問を解決して、ここら辺から入って行こうとめぼしをつけるに打ってつけのものです。
名録音紹介については、ここ10余年の作品は当然載っていないのですが(よって映像作品が少々乏しいのは致し方ありません)、いまでも十分に通用すると思います。巻末の参考文献案内も秀逸で、自分でもいろいろ情報を取って行きたい方には大きなヒントになると思います。

著者の本間氏自身、日本での歌手の評価がちょっと偏ってはいまいか、断定的過ぎやしまいかと常々疑問を持っておられたそうで、「これはダメ」・「あれは下品」などと切って捨てずに、さまざまな歌手を広く取り上げて、丁寧に紹介する姿勢は大変評価できると思います。勿論、自分自身の好き嫌いについても触れていますが、そこは率直ながら「あくまで私の意見です」と判る記述でかえって好感を持ちます。
それぞれの歌手がどんな声で、どう歌って、どういう役柄を得意としているか、自らの感想、日本の世評、海外の評価などバランスよく織り交ぜてあって、読みながら「この人でも、あの人でも、聴いてみたい!」という気分になってしまいます。取り上げた作品の多さ、歌手の多さは十二分な分量でしょう。
イタリア・オペラに焦点を当てているので、ドイツ・オーストリア系オペラ作品における名歌手は敢て省いているそうです。機会があればそちらについても書きたいという意向をお持ちの様で、ぜひ最近の変化も踏まえて最新刊ないしは増補版を出していただきたい・・・と切に願うものです。

これは男女10人の歌手を取り上げて、舞台裏の出来事や、生い立ち、役柄と音楽的・演技的にどう取り組むか等々さまざまな話が面白いものです。
この記事を書いている時点では、Amazon.co.jpでの中古価格がまだ高いので、古書店街に探された方が良いと思います。
『マエストロ』のインタビューでは、たしかに面白い発言もあり、経歴も判りと重宝はするものの、どこかしら掘り下げが足りないような気がしてしまうのですが、こちらの歌手へのインタビュー集は、そんなことは気にせず、気軽に楽しめる内容かと思います。
上の三冊は、いまの若手の情報は当然のっていないのですが、これについては著名なオペラ劇場のある外国の雑誌やwebstieで情報を地道にとること(余裕のある方はそれこそ歌劇場に通うのでしょうが・・・)しかないのでしょうね・・・
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昔の映像といまの映像を見ると、音は録音機器の影響もあるとは思うのですが、舞台演出や演技でもやっぱり時代で随分変わるものだなぁ〜といろいろ見方によって発見するものも様々ありそうです。
出てくる歌手は20世紀前半に活躍していた往年の名歌手27名。ざっと名前だけ書いてしまいますと、カルーソー、ジョヴァンニ・マルティネッリ、ジーリ、スキーパ、デ・ルーカ、ルイーザ・テトラッツィーニ、スペルヴィア、ポンセル、リヒャルト・タウバー、シャリアピン、フラグスタート、ローレンス・ティペット、リーゼ・スティーブンス、メルヒオール、ピンツァ、ビョルリンク、デ・ロス・アンヘレス、サザーランド、レオンティン・プライス、ボリス・クリストフ、オリヴェーロ、ヴンダーリヒ、ヴィッカーズ、フランコ・コレッリ、ディ・ステファノ、マリア・カラスとなっています。
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数日、数週間に亘って書いて参りました、いろんな演奏家を探してみましょう!のつづきものですが、本日の歌手編でひとまず終わりにしようかと思います。指揮者、ピアニスト、ヴァイオリニスト&チェロ、歌手・・・それだけ?というのは当然の疑念ですが、木管・金管その他の奏者については、まとまったよい書籍がなかなかないのですみません。私が寡聞にして知らないだけだったら、ますます申し訳ございません。
他の楽器奏者については、指揮者編に触れたような方法で名盤○○選といったものから知っている名前を増やして、www上で検索をしたり、最近はレーベルの公式頁も増えたYouTubeで検索して、そこにつけられたコメントから違う名前など知れば、段々増えて行くのかなとおもいます。
では本日はこの辺りで!