2008年03月07日

本日3月7日はモーリス・ラヴェル(1875-1937)の誕生日です!− ヴァイオリン・ソナタの名盤&名著ご紹介

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本日3月7日はラヴェルの誕生日。ラヴェル関連の書籍と云うと、私も二冊しか読んで居らず、一つは弟子のロザンタール著『ラヴェル―その素顔と音楽論』、いま一つは昨日ちょっとご紹介致しましたアービー・オーレンシュタイン著『ラヴェル 生涯と作品』

マニュエル・ロザンタール著『ラヴェル―その素顔と音楽論』の商品写真前者は日々の交流から生まれた書籍ですから、普段のラヴェルのちょっとした仕草のようなものが見えて面白いですし、後者は標準的な伝記として、当時の他の音楽家との交わりや詳細な作品解説が面白いもの。どちらもお薦めの書籍です。

ロザンタールの著作から回想を一つ引用致します。およそ30歳ほど年の若いロザンタールはラヴェル宅に通って作曲を教わって居ましたが、やはり先生ラヴェルは時々大変厳しくなる。宜しくないと判断した課題を破いて暖炉に放り込むといったこともしばしば。

弟子も弟子で若気の至りだったかも知れませんが、ある時、そんなこんなに耐えきれずついに部屋を飛び出してしまいます。

こんな失礼なことをしたからには、もう二度と教わることなんてできないと後悔しながら乗り合い馬車に独り座るロザンタール・・・

雨が激しく降り出したが、突然、馬車の曇ったガラス越しに、人影がこちらへ走ってくるのが目に入った。私は、どうやって馬車に乗るのかがわからない旅人が来るのだと思い、彼を待って、扉を開けた。すると外には、ラヴェルが立っていたのである。帽子もかぶらず、コートも着ないで、じっとしたまま、ずぶ濡れになっていた。そして、こう言った。「どうしたんだい。先生にさよならも言わずに、出ていってしまうつもりかい?」この場面を想像していただきたい。私は、わっと泣き崩れ、そしてすべて解決した。

心優しい挿話と思います。100年も前の雨のパリでそんなことがあったのかと想像するのはちょっと面白いものです。

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さて、ラヴェルも名曲が多いので、どの曲を取り上げるか悩みどころですが、今回は私事ながら、ラヴェルを好きになるきっかけとなったヴァイオリン・ソナタでさまざまな名盤紹介と参ります!

一度聴いたら忘れられないようなピアノによる開始に、さりげなくヴァイオリンが絡まって、そこからもうこの曲の世界にすっかり惹き込まれてしまいます。第二楽章のブルースは当時から賛否両論のようですが、これも大変面白い楽章。魅力を語るも何も頭の中でメロディが鳴ってきます。(いま曲を聴いてみたい方は、ここをクリックして、開いたページのYouTube○映像をチェックして再検索です。)

往年の名盤というとシゲティ/ブッソッティ(ブソッティ?)フランチェスカッティ/カサドシュでしょうか。私もやっぱりこの二つから入りました。20年ほど前だとこの他に手に入りやすい録音もなかった気も致します。エッジの聴いたシゲティ盤とフランス組の聴きやすいフランチェスカッティ盤は対照的で、どちらも面白い録音ですし、いまだ聞き返しますが、現在共に在庫切れです。

オイストラフ、スーク他演奏 ラヴェル作品集の商品写真その他に往年の名人を探すと、シゲティやフランチェスカッティよりは一世代若くなりますが、正統的(?)な名演奏としてダヴィッド・オイストラフとフリーダ・バウアーの録音(1966年5月18日ライブ録音)が挙げられます。

メジャーレーベルからのリリースではないので、店頭で見かけずに残念な思いの方も多いのでは?私がこの録音を知ったのはつい数年前(モンサンジョン製作のオイストラフのドキュメント『太陽の窓』がきっかけでした)。

やはりオイストラフのヴァイオリンが見事で、ぜんぜん奇抜なところはなく、自然な様で、フレージングといい音色といい、しっかりした音楽になっていて「そうそれ!」と言いたくなる演奏。上へ下へと跳躍するメロディで、さまざまな音色が聴こえてきて気持ちがいいものです。その様々な音が、またきちんと鳴っているのが感心です。

私の(ほとんど根拠のない)印象で、オイストラフとこの曲は合わない気がしておりましたがびっくりでした。

このCDはちょっと変わっていて、オイストラフの演奏ではこれまた見事な1957年5月31日録音のツィガーヌ(ピアノはV.ヤンポルスキー)を収録していますが、半分はヨーゼフ・スークの録音集になっていて、1897年作曲の1楽章のヴァイオリン・ソナタ、ハバネラ、そして何と言ってもドビュッシーの思い出に捧げられたヴァイオリンとチェロのためのソナタ(ピアノは入って居らず、ヴァイオリンとチェロのDuoの曲です)を収めています。この異色(?)のソナタには、チェリスト アンドレ・ナヴァラが参加。

ヴァイオリンとチェロのためのソナタは、アービー・オーレンシュタイン著『ラヴェル 生涯と作品』によれば、ラヴェルの転機ともなった作品とのこと。東欧民族音楽調とかなり現代音楽的な作風とが混じり合っていますが、同書曰く、ラヴェルはコダーイの作品を研究しており、また、シェーンベルクの影響も認められるとのこと。未聴でしたらぜひどうぞ!

矢部達哉・横山幸雄演奏 レザムルーズの商品写真ヴァイオリン・ソナタというとヴァイオリンについつい耳が集中しますが、ピアノもそれぞれ演奏者の個性があって楽しい演奏です。

すでに上に挙げたものも、それぞれ実にうまいなぁという演奏ですが、ピアノが際立っているという視点で言うと、矢部達哉・横山幸雄のデュオがこれまた面白いもの!

矢部氏のヴァイオリンがどちらかと言うとすらすらと軽やかに奏でる後ろで、ピアノの横山氏があれやこれやと腕をふるうある種キワモノ的な演奏。さまざまに弾き方を変える指先が見えてくる様で「やる〜!」って笑ってしまいます。

ラヴェル自身、この曲はヴァイオリンとピアノがそっぽを向いた曲と言っているそうですから、この二人の対比は意図的なものでしょうか。序でに言ってしまうと、「第一楽章と第三楽章、そのテンポはヴァイオリンに酷です・・・!!」と聴いていていつも思います。

このCDには、ギョーム・ルクー(Guillaume Lekeu 1870-1894)のヴァイオリン・ソナタ ト長調を収録されているのもお薦めポイントです。

「ルクーって誰?」とお思いの方には、Pelleasのホームページ お気に入りの作曲家・ルクーに略歴、作品一覧等々詳細な記述があるので、ぜひご訪問ください。

結構、探すとさまざまな録音があって、なんとなくロシア系ヴァイオリニストで挙げてしまうと、ドミトリー・シトコヴェツキーとベラ・ダヴィドヴィッチの録音も十分推薦に値します。商品写真がないのが残念です。これは1897年作曲の1楽章のヴァイオリン・ソナタ、ツィガーヌ、
フォーレにちなんだBerceuse
を収録。シトコヴェツキーの作る音楽はクールと言ったらいいのかしら、ツィガーヌなどもどこがどうといいにくいのですが、他にはない大変面白い弾き方で重宝しているCDです。

勿論、ロシア系以外でも、フランク・ペーター・ツィンマーマンとアレキサンダー・ロンキッチ(と読めばいいのでしょうか?Alexander Lonquich)のものも良いですし、いろいろお探しの場合はLook4Wieck.comの検索頁をどうぞ。

モニク・アース 独グラモフォン全録音の商品写真最後に注目したいのは、ヴァイオリンの名教師マックス・ロスタル名ピアニスト モニク・アースと組んだ録音(1958年10月)。これもまた大変面白いものです!

この曲にしては比較的ゆるやかなテンポで、モニク・アースが控えめな様で実はそうでもなく、趣向を凝らした演奏をするのが素晴らしいですし、その上で50代半ばのロスタルがかなり自由に歌います。このヴァイオリンがまたあれやこれやを盛り込んでいて、大変愉快。ヴァイオリンを弾かれる方なら、あれはこうして、これはこうでと様子が見えてくるのではないかしら?

ロスタルについて、「先生→厳しい・真面目」といった勝手なイメージを持っていましたが、この演奏を聴いて、結構ユーモアのある方だったんじゃないかと、これまた勝手なイメージを持ちました。

後日別途ご紹介するかと思いますが、この演奏はモニク・アースの独グラモフォン全録音(8枚組)に収録されています。ラヴェルで言っても二つのピアノ協奏曲や幾つかのピアノ曲が入っていますし(両手の協奏曲の方は二種類)、ドビュッシーは前奏曲第一集・第二集の全曲、その他モーツァルト、シューマン、ストラヴィンスキー、バルトークのピアノ協奏曲他が入っていて、どれも面白い演奏です。

モニク・アースの名前も往年のファンは兎も角、若い方々にはあまり馴染みがないかも知れません。これを良い機会に「ぜひお手にとられては」とお薦めしたいセットです。

ではまた次回!
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posted by sergejO at 14:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 作曲家の誕生日です!
この記事へのコメント
「どうしたんだい。先生にさよならも言わずに、出ていってしまうつもりかい?」
に、涙しちゃいました。

振り返ってみたら、ラヴェルの人間性には、あまり触れてみようと思ったことは無かったなあ。彼の音楽の性格がそうさせたのでしょうかね。精緻な美しさは、一方でクリスタルな印象があって、人格を透明なものとしてしか考えられない。
・・・主観は、恐ろしいですね。反省。
Posted by ken at 2008年03月08日 23:37
私もこのロザンタールの本を読んで、ラヴェルの印象がすっかり変わったと言いますか、ラヴェルの人物像が固まった気がしました。

よくある逸話だと妙に奇人な感じがしますけど、結構、優しくって、妙に常識人みたいなところもあって、ではどんな人物って一言で言える訳でないけれど、なんとなく近くなった気がしています。
Posted by sergejo at 2008年03月09日 00:35
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