2008年04月09日

先日のブゾーニの誕生日記事に補足致しまして − 長谷川つとむ著『魔術師ファウストの転生』

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先日はブゾーニの誕生日記事で歌劇《ファウスト博士》を取り上げておりますが・・・

昨日、4月1日はフェッルッチョ・ブゾーニの誕生日!その2− 歌劇《ファウスト博士 Doktor Faust》

長谷川つとむ著『魔術師ファウストの転生』の商品写真その中で、ブゾーニは元々ゲーテの『ファウスト』のオペラ化を考えていながら、大衆人形劇版の『ファウスト』を基とすることに方向転換した云々と書きました。では人形劇版とゲーテ版とどう違うのか???

・・・と疑問を持たれた方々に撮って見通しの良い書籍を見つけました。 長谷川つとむ著『魔術師ファウストの転生』です。

初版 昭和58年(1983)。現在中古でしか手に入らない様子。内容は実に面白いもので、秀逸な新書といった手軽さ・読みやすさ。私も先日読んだばかりですが、ゲーテ・ファンだったことは差し置いて、大げさな話でなく、止められなくて一日で読み切りました。

な〜んて書いてしまうと、「むしろ簡単すぎやしまいか・・・」とお思いになるやも知れませんが、結構、考えさせられました。私にとっても予想外でした。

送料入れても今どきの新書に比べて随分安価なので、ご興味があればぜひどうぞ! (勿論、図書館にも置いてありそうな気が致します。)

詳細に各章の見出しと中身を紹介しますと、


ご覧の通りで、第一章でファウストの史実に迫り(←むしろ「この程度しか判らないのです」という報告)、また民衆本ではどのように扱われたかを記します。パラケルススが入っているのは、ゲーテがファウストのモデルにパラケルススも考慮したからです。

この第一章の中世に於ける二人の異端者の話だって十分面白いのですが、その後、ゲーテ以前、以後の文芸作品に於ける、さまざまなファウストについて紹介していきまして、軽妙な作者紹介、詳細なあらすじ披露、慧眼な批評開陳と、筆の運びが上手いのでどんどん読み進められます。

上の目次紹介に、今現在手に入りやすい数々のファウスト変奏曲(?)をリンクして置きましたが、実際、この『魔術師ファウストの転生』でかなりいろいろ知れますので、概要をこちらで掴んでから好みのファウストを探るというのも一つの手かなと思います。

それぞれの時代、作者によって、ファウストそしてメフィストがどう扱われて来たか、、、文章の面白さ・美しさは取りあえず脇に置いて、それぞれの特徴を探るのが見事で、レッシングが何故ファウストに救済のテーマを持って来たのか、ゲーテのファウストはそれをどう引き継いだか、、、

岩波文庫 ゲーテ 『ファウスト 第一部』の商品写真著者の長谷川氏は中々さばけた方で、ゲーテの『ファウスト』紹介にこれだけ熱が入っているからには、相当にファンであるにもかかわらず、一番得をしているのがゲーテのファウストだ(=よって一番損をしているのが、ゲーテのメフィストフェレス)といった発言があるのもにこやかにうなづけます。実際、ゲーテの『ファウスト』を読んでうっすらそんなことを考えた方もいらっしゃるのでは?私はそうでした。「偉大なる凡庸への回帰」というのもうまい表現と思います。

ゲーテとバイロンゲーテとハイネの邂逅のエピソードを対比的に紹介するのもうまく、ハイネの紹介が少々手厳しいかとも思いますが、私自身前からそんな印象を持っていたので結構うなづけました(このゲーテとハイネの出会いが「そりゃ眉をしかめられるでしょう・・・」というもので)。

そんなこんなと言っておりますと、いろいろ引用したくなって切りがなくなるようなものですので、ぜひ騙されてお手に取られることを!

*****

日本に於けるファウストも中々見事。つまるところ、日本に於ける文化ないしは文化人と社会との関係について − 社会的な行動力なんて言っても良いでしょうか − 著者の問題意識があるのかと思います。それを深く検討するのはこの書籍の役割ではなく、「さまざまなファウストを見ていると、やっぱりそう思えてしまう」といったことでしょう。

よくよく考えれば、洋の東西を問わず、そんなものかも知れませんが、「だからかまわない」とは思わずに、ちょっと読みながら考えてみるべきことかも知れません。

中島敦の『わが西遊記』の解説など、短いながら本書でも読み応えのある部分の一つでしょう。実際、中島敦がどこまでファウストを意識しているかは書かれて居らず、私もこれについては全く無知ですが・・・

これは河童の沙悟浄(=中島)が、無知の実践家たる孫悟空とその対極の人物たる三蔵法師の姿を見て、いろいろと感化され、自ら作り替えようとするストーリーとの紹介をしています。しかし、そこに「はじめに業があった」という精神が弱いという指摘を読むと、久しぶりに中島敦も読んで確かめようかな・・・とつい誘われます。

手塚治虫『百物語』の商品写真手塚治虫とあるのを見て、ちょっと意外に思われる方もあるやも知れませんが、長谷川氏は、手塚治虫がファウストの骨格を掴んで、またうまくそれを翻案していると、きちっとあらすじ、キャラクター設定を引き合いにだして紹介します。私は読んだことがないのですが、その説明には説得力があって驚きでした。

手塚にこそ、一番実践の力が溢れている・・・こういった思いが作者の手塚への好意の根本にあるようです。実際、この書籍を読んで、手塚治虫の『百物語』 に一番関心が向かう人があってもおかしくないと思います。

いまや漫画もすっかり本流の波に載っているので、むしろ著者が「敢て漫画も!」と力こぶで紹介している様にかえって違和感を感じる方もいらっしゃるかも・・・この点は20年前の書籍ということをご考慮ください。

ではまた次回!

p.s.:中島敦の『わが西遊記』の解説を読んで、現在『シグルイ』を連載中の山口貴由の『悟空道』を思い出しました。この方の作風は猟奇ものといいますか、エロ・グロ・ナンセンスの要素が強いので、一読、顔をしかめる方も多いと思います。それはそれで正常な反応かと思います。いずれにせよ、この『悟空道』の作者あとがきかなにかに、中島敦のことが書いてあったか無かったか、、、とちょっと気になりました。
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