2008年04月24日

一月ほどずれてしまいましたが、3月9日はムソルグスキーの誕生日だったのです vol.2 −ピアノ版《展覧会の絵》の名盤ご紹介

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一柳 富美子著『ムソルグスキー 「展覧会の絵」の真実』の商品写真昨日は、一ヶ月遅れの3月9日はモデスト・ムソルグスキー(1839-1881)の誕生日企画で二冊の本をご紹介致しました。本日は、ムソルグスキーと言えば!の名曲の一つ《展覧会の絵》の名盤ご紹介です。

この曲については、昨日も触れましたように一柳 富美子著『ムソルグスキー「展覧会の絵」の真実』が大変詳細に解説して居ります。

繰り返しになりますが、これは60頁のパンフレットながら、伝記&諸作品紹介のバランスの取れた優れもの。頁数など関係なく、網羅する情報はさまざまで、各種の指摘も大変面白いものです。

いまでこそ有名ながら、1874年の中頃に作曲された後、ムソルグスキーの存命中には出版されず、また、生前に公式に演奏された記録もないこの《展覧会の絵》。

著者は一章を割いて、全てではないものの、元絵について図版もつけて説明同じく全てではないものの《バーバ・ヤガー》等の不思議なタイトルについても由来の解説もしています。

ホロヴィッツ独奏 ムソルグスキー《展覧会の絵》他の商品写真この曲の通説はこれこれだが実はこうである、絵に込められた意味は、、、などなど、ムソルグスキーが共感していた社会の潮流と絡めているのも面白いところ。

この本の中身の詳細を書いてしまうと、頁数が少ないだけに著者にもかえってご迷惑になりかねないので、ほどほどに致しますが、著者は《展覧会の絵》は世界各国を巡っているようであるが、実はロシアを描こうとした、ロシア的な作品であるとしています。また、絵画の視覚的印象を音楽的ストーリーにしたような作品ではなく、激情的なムソルグスキーの主観・共感に溢れた作品なのだとも。

カペル独奏 フリック・コレクション・ライヴの商品写真ムソルグスキーの作品はリムスキー=コルサコフが改訂した上で出版した作品が多いのですが、それが洗練されているかも知れないが、本当のムソルグスキーの作風としてはどうだろうという疑問も投げかけて居り、《展覧会の絵》の第四曲《ブィードロ Bydlo》の冒頭をその典型として挙げています。

本来ffだった《ブィードロ》の開始を、ppにはじまるクレッシェンドに改訂してしまった。しかし、これは労働者の苦難を描く曲であり、そこに激しく思い入れを寄せるからffなのではないか?改訂後の曲では、傍観者として眺めるような曲に変わってしまってはいないか・・・この曲を世界的に有名にしたラヴェルの管弦楽編曲版もリムスキー=コルサコフの改訂版に従っている・・・

この曲に限らず様々面白い指摘がありますので、ぜひ一柳 富美子著『ムソルグスキー「展覧会の絵」の真実』お手に取られることをおすすめ致します。

*****

国内盤リヒテル独奏 ソフィア・リサイタルの商品写真さて、名盤選びですが、そうなりますと、第四曲《ブィードロ》がffではじまる演奏、感情移入が激しく、ロシア的な演奏とは!と探したくなるものでしょう。

そこで私の手持ちのCDで気に入ったものを聞き返してみたのですが、《ブィードロ》を明らかにffで始めるのは、ペーター・レーゼルとウィリアム・カペル、確かアシュケナージもそうだったかと・・・いま部屋の掃除中でそのCDだけ見当たらず。。。そもそも、上の著書では《ブィードロ》考察にあたって、アシュケナージの言葉を傍証として紹介していますので、著者の好みの演奏かなと推察しています。

レーゼル独奏 Works for Pianoの商品写真ホロヴィッツの有名なライブは、弱音からクレッシェンド。リヒテルはクレッシェンドせずとも出だしから十分に重々しい印象ですが、音で言えばmfといったところでしょう。

園田高弘はやや強めの音でペダルを響かせながら一種静けさもありますが、暗く辛い感じ。これが傍観者的かと思えれば、作業者が辛さに沈鬱になっているとも思えます。

ffで始めたからといって、感情移入が強い、暗い、辛いといった重さが伝わるのでもなく、ホロヴィッツ盤もクレッシェンドしたからといって、客観的傍観者とは言えない演奏と思います(途中から、曲に入り込んだような重苦しさに視点が変わったと感じてもおかしくないでしょう)。

では、ロシア的なの演奏は?

期せずしてホロヴィッツ、リヒテル、アシュケナージとロシアの演奏家が多いのですが、東ドイツ出身のレーゼルはロシアに留学経験もありロシアものを得意としていますし、ウィリアム・カペルはロシア系ユダヤ人・・・しかし、カペルにそういう意味でロシアの何かを探すのもどうなのでしょう?そもそも、彼らの演奏だっていろいろ違います。

われわれだって、「なにが日本的?」と言ったら、さまざまな日本を思うことでしょう。

昨日ご紹介したもう一冊の本、ジョン・ブラウン著『ムソルグスキー』(John Brown, Musorgsky)に載っているのですが、長らくペテルブルクに居たムソルグスキーは、若き頃、モスクワを見て、これこそロシアだ。ロシアを発見したと感動しています。その時、ムソルグスキーが感じたのはなんなのか・・・

ウラディミール・アシュケナージ独奏&指揮 ムソルグスキー《展覧会の絵》の商品写真・・・ここで、我が身を振り返ると、確かにモスクワとサンクトペテルブルクに旅行して、1週間ちょっとながら美術館、劇、コンサート、居酒屋その他もろもろみまわったものですが、「なにがロシア的か?」と問われたらやっぱり詰まります。何となくはあるのですが。

どの演奏も実はこの一ヶ月何度も聞き返しましたが(それが記事の一ヶ月遅れの一因でもあり、、、)、どれもロシア的なようにも聴こえれば、ロシアはともかく曲に入り込んでいるようにも聞こえ、次にはどれもピアニストの刻印が打たれているように聞こえ、、、

園田高弘独奏 ムソルグスキー《展覧会の絵》他の商品写真年代が新しければ、最新の研究を盛り込んでいるかといっても、そうもいかず、一番録音年の新しい園田のスリーブノートに、そもそもこの曲の楽譜は異種さまざまで音符の違いも甚だしく、いろいろ検討したが、自分はリムスキー=コルサコフの校訂版を基に、、、ここまでは大変伝統的と言えますが、、、結局、さまざまな楽譜、演奏、チェリビダッケによるオーケストラの録音なども考慮して最終的に音を決め、演奏したとのこと。

・・・そんなこんなで実に難しいものだな、とあらためて思ったのですが、取りあえず年代順に並べて、いまこの時点の私の考えでコメントを書きますと!

ホロヴィッツ独奏《展覧会の絵》国内盤輸入盤
録音: 1951年 ライヴ at カーネギーホール
ホロヴィッツの名盤としても名高い緩急激しく移り変わる快演。自ら装飾を加え、こうなると編曲といってもいい場面もあり。そういった点から、私などは《展覧会の絵》よりもむしろホロヴィッツを知る演奏という印象を持ちますが、いずれにせよ演奏はすごいものです。併収がトスカニーニとのチャイコフスキーのピアノ協奏曲で、これまたトスカニーニらしく、ホロヴィッツらしいもの。

ウィリアム・カペル独奏 Frick Collection Recital
録音: 1953年 ライヴ at フリック・コレクション、ニューヨーク
隠れ名盤となるのでしょうか?霊感というか、幻想的というか、ファンタジーというか、そういうものを感じさせるのは、本日挙げたもので言うなら、わたしは下のリヒテルとこのカペルと思います。
このCDでは、カペルがアメリカ発のピアノ曲として大変重視しているアーロン・コープランドのピアノソナタの名演!も収録。ショパンの数曲も大変良いものと思います。RCAカペル録音全集(8cd+Bonus1disk)もありまして、素晴らしい演奏が多いのでぜひご検討ください。

リヒテル:ソフィアリサイタル 国内盤輸入盤
録音: 1958年ライヴ at ソフィア
リヒテルを西洋に知らしめた!といううたい文句のつく、有名なソフィアライヴ。リヒテルらしく激しく、時に透明に清澄で、曲とピアニストが一体になって、どちらを聴いているのかわからないような名盤。「間違えない」という価値観とは違うものです。その他演奏されている、シューベルト、ショパン、リストも大変素晴らしいもの。私も時々、シューベルトだけ、リストだけという風に聴いたりもします。

ペーター・レーゼル独奏のボックスセット Works for Piano 所収《展覧会の絵》
録音: 1971年
ペーター・レーゼルは私は質実剛健なピアニストとついつい言ってしまいますが、実は表現の幅の大きいダイナミックな音楽を作ります。13枚組ですが一枚単価は安いですし、演奏も5枚分収められているブラームスなどは特に素晴らしい出来!全体的に標準は超える演奏ですし、国を超えて、さまざまな作曲家のピアノ曲を収めているので、ピアノ曲をいろいろ聴き始めたいという方にも良いやも知れません。
大部なものなので、別途紹介した方が良いのですが、ここで触れたブラームスとムソルグスキーだけでも十分元は取れると思います。ムソルグスキーのGopak他のピアノ小品も4曲収録
なお、《展覧会の音》では、「なんて立体的な音・響きなんだ!」と吃驚しましたが、右が高音、左が低音のいわゆるステレオ録音な撮り方もあるかと思います。私は古い録音を聴くことが多いせいかすごく吃驚しました。

ウラディミール・アシュケナージ独奏&指揮 ピアノ版&管弦楽版《展覧会の絵》
録音: 1982年
アシュケナージというと、割と奇麗に収めて弾くという印象がある方も多いかと思いますが、この《展覧会の絵》に関しては、乱暴さも辞さない表現もあり、さまざまアイディアも盛り込んであって面白い演奏!60年代にも同じDeccaで録音をしていますが、これは二度目の録音です。アシュケナージはこの曲への思い入れが強く、楽譜も随分検討した由。
オーケストラ版はアシュケナージ自らの管弦楽版で、これが派手な場面など特に面白いもので、私は「そう来るか!」と結構楽しみました!


園田高弘独奏 ムソルグスキー《展覧会の絵》&ラヴェルのピアノ曲
録音: 1992年
本日挙げた中では、一番控えめで、渋い演奏かも知れません。丁寧にそれぞれの曲が検討されています。私は良い演奏と思いますし、実はかなり好みです。ヴィルトゥオーゾな演奏ばかりでなく、こちらもぜひ!と思っています。ラヴェルの演奏もこれまた良質なもの!

*****

その他、キーシン Kissinブレンデル Brendelなど、評判の録音にはめぐまれた曲−さまざまな演奏を受け入れる幅の広い曲?− ですから、いろいろ探されると面白いと思います。その際は、ぜひLook4Wieck.comの検索機能をご活用ください。(日本語なら 展覧会の絵 をキーワードに、英語なら Mussorgsky pictures で良いと思います。)

*****

小川典子独奏 ムソルグスキー《展覧会の絵》他なお、今ひとつ録音を挙げておきますと、日本の小川典子さんによるムソルグスキー自筆譜のファクシミリ版を基とした1997年の録音。私はまだ聴いて居りませんが、どんな演奏なのでしょう?

オペラ作成前に作ったピアノ譜をもとに、《ボリス・ゴドゥノフ》・《ホヴァーンシチナ》・《ソローチンツィの定期市》から数曲収めているのも興味深いところ!

ではまた次回!

p.s.:《展覧会の絵》について、さまざま編曲も含めていろいろ検討されている頁を見つけましたので、ご紹介致します。てきーらのぺーじ:Sound for The "Pictures" 展覧会の絵−編曲比較1。読み応えある内容で皆様もぜひどうぞ。
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posted by sergejO at 18:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作曲家の誕生日です!
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